六年と同級生
(ん?)
食堂に入ってすぐ、その後ろ姿に気が付いた。
「白兎?」
「ん?おう、留三郎。」
今から飯か?と振り向いたのはやはり思った通りの同級生。
それに答えながら、おばちゃんから握り飯を受け取ると、俺はその隣に腰を下ろした。
「自主練でもしてたのか?」
「いや、委員会活動でちょっとな…そう言うお前は、町に出掛けてたんじゃなかったのか?」
「それがな、い」
「いけいけどんどーん!」
白兎の声を遮るようにして、食堂に駆け込んできたのは小平太。
そしてその後ろには長次が静かに続く。
「腹減ったー!おばちゃん、頼んでた握り飯を頼む!二人分!」
「…………」
「はいはい。」
「おい、小平太。もう少し静かにしろよ。」
「ん?おぉ!白兎に留三郎!二人も今から飯か!」
「だから静かにしろって。」
いくら飯時を過ぎて他に生徒の姿がないとは言え、最上級生が騒いでいては下級生に示しが付かない。
そう注意したものの、小平太は聞いているのか聞いていないのか、俺と同じようにおばちゃんから握り飯を受け取り、俺とは逆の白兎の隣に座った。
長次はその小平太の前に腰を落ち着ける。
「お前らも委員会絡みで遅くなったのか?それとも自主練?」
「私は自主練だ!それで長次はこの間お使いに行っていて受けられなかった座学の補講を、」
「………」
「ん?あれ?そう言えば白兎、朝から出掛けてなかったか?もう帰ってきたのか?」
「あぁ、それが、い」
「今から飯とは、少し遅すぎるんじゃないか?お前達。」
またもや遮られた白兎の言葉。
つられるようにそちらを見れば、今度はい組の二人が湯呑みを片手にこちらへ向かってくるところだった。
「仙ちゃん!文次郎!お帰り!」
「………」
「そうか。い組は昨日から課外実習だったんだっけ。お疲れさん。」
「あぁ、ただいま。」
「……おい、仙蔵。そこ、席替われ。」
話しながら自然な流れで白兎の前に座った仙蔵に、立ったまま顔を顰める文次郎。
そりゃそうだ、空いている席はもう俺の前しかない。
俺だって、そこに文次郎が座るなど願い下げだ。
何が悲しくてこの老け顔と向かい合って飯を食わなきゃなんねぇんだ。
「何故私が席を譲らねばならない?お前は先着順という言葉を知らないのか?」
「ぐっ…!」
「というか、わざわざここに座る必要ないだろ。他のとこに行け、他の。それで一人寂しく茶でも啜っとけ。」
「何だと!」
「落ち着けよ、文次郎。留三郎も、喧嘩するなら全部食ってからにしろよ。おばちゃんに怒られるぞ?」
「そう言えば白兎、今日は出掛ける予定じゃなかったのか?」
俺達のやり取りなど眼中にないかのように、そう白兎に話し掛ける仙蔵。
それに対して答えようと白兎が口を開こうとした瞬間、「おぉ!」と突然小平太が声を上げた。
反射的にその場にいた全員の視線が小平太へと集まる。
「何だ、いつの間にか六年全員勢揃いだな!」
言われてみれば確かに、特別約束を交わした訳でもないのに集まった面々。
そのことに誰とはなしに顔を見合わせ、思わず皆で笑ってしまった。
そして、その小平太の言葉に違和感を覚えた者はいなかった。
諸事情により、欠員一名。
(…お腹空いたなぁ…白兎、まだかなぁ…)
医務室で待つ伊作の存在を白兎が思い出すのは、それからさらに数刻後のことだった。
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嘘つき、ロンリー。