士郎とウサギの獣人01


※アニメ本編終了直後辺り。









「このままで本当にいいの?」


遠ざかるその後ろ姿をぼんやり見送っていると、傍らの少女がそう問い掛ける。

いつだったか、前にも同じことを、別の少女から言われた覚えがある。


そしてその時も今も、俺の答えは変わらない。


「いいも何も…仕方ないだろ?」


かの名を呼ぶ者は未だに多く、自分がそれを引き留めることなど出来やしない。

そう苦笑混じりに肩を竦めて見せれば、彼女もまた、どこか傷付いたようにその顔を歪ませ―…


「だめ、全然だめ。私が無理だから。ちょー無理だから!」

「は?なに、」

「ということで、なずな!ちょっと手伝って!」

「オッケー。」

「え、ちょ、!?」







「…それで、出会い頭にいきなり白兎を放り投げてくるとは一体どういうことだ?」


淡々と、だがどことなく怒りを滲ませる士郎に、その腕の中でぐったりしながら俺は無理もないと思った。

まるでボールのように、人一人を文字通り「投げつけて」こられては誰だって怒るに決まっている。


それにしても腕だけとはいえ、あのゴリラ化は本当に卑怯だ。

その上、二人掛かりで襲ってこられては、ウサギの俺が獣化したところで勝てる訳がなかった。


「じゃあみちる、私まだやることあるから行くね?」

「ありがとう!私もすぐにそっち手伝いに行くから!」

「おい、聞いているのか?」

「……その前に士郎、お前も俺を下に降ろしてくれないか…」


親友を見送るみちる、を睨み付ける士郎、を見上げる俺。

士郎が受け止めてくれなければ、今頃怪我では済まなかったかもしれない。

そこは確かに感謝しているが、いつまでも子どものように横抱きされたまま、というのは流石にいい年して恥ずかしい。


そう訴える俺に、士郎は今初めてその存在に気付いたかのように、きょとんとその目を見開かせた。

だが、何か言うより先に、みちるが呆れたように口を開く。


「士郎さん、いい加減素直になりなよ。」

「…何の話だ?」

「分かってるくせに。」


ほんと面倒臭いなぁ…と元のタヌキ姿に戻るとその腕を組むみちる。

再びそちらに気を取られてしまった士郎に、俺は降りるタイミングをなくしてしまった。


ならば自力で、と身じろいだ矢先。


「それに白兎さんも。『銀狼様』はみんなの『銀狼様』だけど、士郎さんは白兎さんだけの士郎さんなんだからね?」

「!みちる、それは」

「ほら、自信持って!」

「いや自信も何も、っ」


その瞬間、士郎の両手に力がこもる。


「士郎…?」

「……なるほど。それはつまり、白兎は俺だけの白兎、ということだな?」

「え、」

「そう!そういうことだよ士郎さん!」


いや、どういうことだよ。

とツッコみを入れる間もなく、「じゃあ私、なずなのところに行くから!後はお二人でごゆっくり!」と手を振り、走り去っていくみちるは満足げだ。

未だ俺を抱き抱えたままの士郎もどことなく嬉しそうで、何が起きたのか理解が追い付いていないのはどうやら俺一人だけらしい。


(……まぁ、士郎がいいのならこれでいい、のか?)


とりあえず、そろそろ降ろしてもらえないだろうか。




あなたがそう望むなら

(そして後日、あれよあれよと言う間に始まった同棲生活)(さらに気付けば周囲公認となった二人の関係)
(それらは勿論、我らが市長様の手回しによるものだった)


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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。