侘助と恋人
CMの合間、トイレに立ったほんの数分。
その数分の間にソファーが占拠されていた。
「…なぁ。」
「ん?」
「俺の座る場所、ないんだけど。」
どちらかと言えば細身の体格の侘助が二人掛けのソファーど真ん中を陣取ったところで、正直あまり支障はない。
だが両腕を背もたれに回し、両足を大きく開け広げられては少し厄介だ。
そして、それが『明らかに俺を座らせないようにしている』と分かれば尚のこと。
無駄だと知りながらも一応「邪魔」と投げ掛ければ、侘助は背もたれ越しに振り返って、
「ここに座ればいいだろ?」
「…………」
…やはり無駄だった。
事もあろうに自分の膝をポンポンと叩いてみせる侘助に、思わず口元が引き攣る。
「どうした?ほら、来いよ」なんて言われて俺が従う訳がないし、侘助もそれは分かっているはずだ。
だからこそニヤニヤと愉しげに笑う姿にイラッとした。
「………はぁ…」
わざとらしく溜め息を吐き出し、ソファーの正面へと回る。
侘助は相変わらず笑いながら俺を見上げていて、全く疑ってはいない。
その不意を突いて、俺は無防備な侘助の膝の上に座った。
「うおっ」と短い悲鳴が上がり、ざまあみろと内心舌を出す。
「何だ?今日はやけに素直じゃねぇか。」
「…うるさい。」
腰に回された腕に引き寄せられ、侘助の方へと寄り掛かる。
気付けばCMも終わり、番組の続きが始まっていた。
何も、耳に入ってこなかったけれど。
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(あなたの、匂いがする)
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嘘つき、ロンリー。