佳主馬と年上の人
※映画終了後。
※健二の友人主。
同年代の少年少女らと比べると自分は大人びた方だ、と佳主馬はそう自負していた。
心ない人間に言わせれば「マセガキ」になるが、それこそ子どもじみた発言だと鼻で笑う余裕すらあった。
(勿論、そこに辛辣な一言を付け加えることも忘れなかったが)
だから―…
『へぇ、奇遇だね。俺らもその日、その辺りで遊ぶ予定なんだ。良かったらどこかで合流する?』
何度も何度もそのメッセージを読み返し、待ち合わせの日時や場所を確認する間、ついつい弛みそうになる口元を佳主馬は必死に引き締めていた。
自分はそんな子どもではない。
一週間前だって、意中の相手に誘われて舞い上がったりなんかしていないし、衝動的にガッツポーズしかけて拳を握ったりなんかもしなかった。
今日が楽しみで楽しみで仕方なくて昨夜はよく眠れなかった、なんてこともなかった。絶対に。
ただまぁ、ここは一旦少し深呼吸でもしようか、と佳主馬がスマホ画面から顔を上げて大きく息を吸い込んだ瞬間。
その姿が目に留まった、瞬間。
佳主馬の頭から一切の事柄が消えた。
「白兎さんっ!」
思わず弾んでしまった自身の声も、特に気にはならなかった。
振り向いた相手が佳主馬の姿を認め、ヒラヒラと手を振りながら「佳主馬くん、やっほ」と笑みを浮かべる。
あぁ、夏ももうすぐ終わりだというのに、その笑顔のなんと眩しいことか!
「遅くなってすみません!」
「いやいや、俺らも今来たところだし。というか、待ち合わせ時間までまだ大分あるし、なぁ?」
駆け寄ってきた佳主馬に対し、そう言って自身の腕時計を示して見せた白兎は、ふとその乱れた呼吸が気になったようだ。
勿論、それが不発に終わった深呼吸のせいであることを、白兎は知らない。
「向こうに自販機あったから何か買ってこようか。何が良い?」
「え、いや、そんな…」
「いいからいいから、遠慮しないで。苦手なものとかある?スポドリとか…あ、お前どうする?」
白兎の気遣いに少し擽ったいものを感じながら、「じゃあここで待ってて」と離れていくその背中を見送るだけで佳主馬はもう胸が一杯になった。
そのため、改めてもう一度深呼吸をして、
「…で、何でお前いんの?」
「え。」
視線は白兎に固定されたまま一瞥することなく、その上あからさまにトーンダウンした佳主馬の声色に、健二は思わず口元を引き攣らせた。
ほぼほぼ空気扱いだったが、健二は最初からそこにいた。
「いや、僕の方が先約…っていうか、あの、今日の白兎の予定を佳主馬くんに教えたのは僕のはずじゃ」
「何でお前いんの?」
「……………」
馬に代わって蹴り飛ばしてやろうか?
「お待たせー、ってあれ?健二は?急用?えー…あ。もしかして夏希先輩からの呼び出しとか?じゃあ仕方ないか…どうする?健二いないけど、このまま二人で遊ぶ?」
(返事は子どもらしく、元気に「はい!」)
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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。