初と主治医
白兎先生と伊達さんが楽しげに話している姿を見た時から、何となく嫌な予感はしていた。
そしてそこに潜夜が加わった瞬間から、予感は確信に変わっていた。
出来ることなら、近寄りたくはない。
が。
「なになになに?何の話?」
「フフッ…今ね、白兎先生から初君の初恋の話を聞いていたんだよ。」
「うっわ、何それ!面白そう!僕も聞きたいなぁ!」
ねぇ、てるりん? と。
こっそり逃げようとしたところをすかさず潜夜に腕を掴まれ、つられるようにこちらへと向けられた二人の視線に呆気なくオレは捕まってしまった。
「ほらほら、てるりん!座って座って!」
「そうだよ、照朝君。あの恋愛マスター(笑)初君の初恋話を聞けるなんて、貴重な体験だよ?」
「…………」
「残念ながら、私もそのお相手までは存じ上げていないのですがねぇ…」
そう少し困ったように苦笑する白兎先生も、「それでもよろしければ」と意外とノリノリらしい。
(すまん、初…)
この状況はとてもオレの手に負えるものではない、と悟った。
「そうですねぇ…坊ちゃんは幼い頃からとても賢い方でしたが、少し賢すぎたのかもしれませんねぇ。」
「と、いうと?」
「ある日、私に真剣に訊ねてこられたのです…ある方を見ると鼓動が速くなる、ある方のことばかり考えてしまって他のことに集中出来なくなる…これは何かの病気の症状じゃないか、と。」
「あっちゃー!ういういってば、ベタだなぁ!」
「それで、白兎先生は何とお答えに?」
「私はこれでも坊ちゃんの主治医ですからねぇ…えぇ、ちゃんと症状に見合ったありとあらゆる病名を、全て教えて差し上げましたよ。それはもう懇切丁寧に。」
「ぶふぉっ!」
まず、潜夜が噴き出した。
伊達さんも口元を押え、肩を震わせているのを見ると笑いを堪えているらしい。
「そ、それで…?」
「少々脅しが、いえ冗談が過ぎてしまったらしく、坊ちゃんは大層怯えてしまわれましてねぇ…目に涙を浮かべながら『自分はもうすぐ死ぬのか?』と私にすがりつき、ネタバラシするまで放してくださいませんでした。あれは本当に面倒、いえもう大変でしたよ。」
「クッ…!」
そしてあれ以来、坊ちゃんは私の話を全く信じてくださらなくなりました…とどこか遠い目で締め括る白兎先生に、(まぁ、だろうな…)と思うオレもきっと遠い目をしているに違いない。
そして、やけに静かになった潜夜と伊達さんはどうやら笑いのツボに嵌まってしまったようだ。
「例えば私がいくら『サンタさんはいないのだ』と言っても、信じてくださらなくて…あれは流石に困りましたねぇ。」
「っ、サンッ…!」
「あの、白兎先生…もうその辺で……」
「あの様子では中学、いえ高校まで『サンタさんはいる』と思われていたのではないでしょうかねぇ…まぁ、今はどうか知りませんが。」
「だから、……え?」
ちょっと待てくれ。
その言い方だと、まるで―…
「楽しそうだね。何の話をしているの?」
「!?」
突然掛けられた声に、思わず肩が飛びはねる。
振り向くと、そこにいたのは何も事情を知らないマルコ。
かと思えば、その後ろには初の姿が―…
「……おい、照朝。どうして、そんな目で俺を見る?」
「…すまん、初。」
「何故謝る?おい、目を逸らすな。貴様ら、一体何を話していたんだ?」
秘密は暴露するためにあるのです
(……次のクリスマスが来るのが、何だか恐ろしいな…)
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九周年ニコニコ企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。