阿良々木と撫子の弟
※『なでこ/スネイク』後日談の後日談?
※時間軸的には『つばさ/キャット』後辺り。
忍に血を与えてから数日が経過しているとはいえ、僕のそれはまだまだ常人の範疇外にあった。はずだった。
ならば一体、これはどういうわけだ?
「おい!いい加減諦めろ!」
「あぁ!?諦めてたまるかよ!むしろそっちが諦めろやボケ!」
吸血鬼の力に対抗しつつも口の悪いこの少年の名は千石白兎、あの千石撫子のまさかの弟である。
言われてみれば可愛い千石の面影をどことなく残した美少年ではあるが、千石より幾分その身長は高く、そして何より千石とは全く正反対の気性の持ち主のようだ。
実はつい先日とある一件で僕は千石と数年振りに再会し、白兎とはその成り行きで知り合ったばかりの間柄なのだが、今やこうしてお互いの手首を掴み合い、取っ組み合いの喧嘩が始まる一歩手前ぐらいまでの仲に発展していた。
まぁ、八九寺と似たようなものだが、あちらと違うのは殺伐とした空気のせいか。
それもこれも全ての原因は僕ら二人の間、その足元に落ちた紙袋にある。
恐らく先程落ちた拍子にだろう、半分ほど飛び出してしまったその中身は、
「いきなり『スクール水着を着ろ』って何だ!?ほぼ初対面の状況で一体何のカミングアウトだよ、おい!?」
「じゃあ何だ!?初対面じゃなければいいのか!?千石に倣って僕のこと『暦お兄ちゃん』って呼んでもいいんだぞ弟よ!」
「うっせぇ!誰が弟だ!大体このスク水、女子用じゃねぇかコラ!この変態野郎!」
途端にギチギチと厭な音を立てたのは僕の骨の方。
これが火事場の馬鹿力というやつかと思わず納得しかけるも、いや感心している場合じゃない!とすぐさま我に帰る。
一応ここで説明しておくが、このスク水は勿論僕のものではなく、僕の後輩である神原の私物である。
先の一件で神原より千石へと貸し渡され、使用後はきちんと千石が洗濯して僕経由で神原に返却したのだが。
『なんてことを!』
酷い!あんまりだ!と散々罵られた後に、あろうことか僕に問題のスク水着用を迫り、そして未洗濯での返却を求めた。あいつこそ真の「変態野郎」に違いない。
「千石にもう一度着せるというのも考えたが流石にそんな無体は出来ない!そこで僕は考えた!男子高校生のスク水姿(女子用)は色々アウトだが、男子中学生ならばまだギリ何とかなる!はずだ!」
「んなわけあるか!普通にアウトだろ!いやそもそも『かんばる』って誰だ!?」
「本当なら神原のやつもここに同席するはずだったんだぞ!流石にそれは何とか説得して回避してやったんだ!暦お兄ちゃんに感謝しろ!」
「だったらもっと説得してスク水自体回避しろよクソが!それかもう着たことにして何とか誤魔化せ暦オニイチャン!」
「無理だ!着用の証拠として写真を撮るのが神原の条件だ!あと個人的には僕も見たい!」
「結局あんたも十分変態野郎じゃねぇか!というか、んな屈辱的な姿を記録媒体に後々まで残してたまるか!」
そう吐き捨てる白兎は、改めて言うが、千石に似た美少年だ。例え今、もの凄い形相をしていようともだ。
そんな美形姉弟が同じスク水(それも女子用)を着るなんて倒錯的光景、あの神原でなくても誰だって見たくなるに決まっている。
いや僕のはあくまでも好奇心を刺激された結果だが。
「だから着ろって!!」
「だから嫌だっつーの!!」
オチは神原だけが知っている。
(つまり妄想にお任せ?)
(って、それは一番任せちゃいかんやつだろ。)
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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。