創作と同級生


きっかけはネクタイだった、と思う。多分。

ある日の休み時間、廊下を歩いていた俺の前に突如立ち塞がったのは同級生兼当学園の(事実上の)理事長様で、俺は突然胸倉を掴まれてしまった。


『ヒッ!?…って、あ、あれ…?』

『…………』


と思っていたら、どうやら俺のネクタイが曲がっていたらしい。

無言で手際よく整えてくれた理事長に戸惑いつつ、何とかお礼を言うことだけは出来たような気がする。よくは覚えていない。


そして、その後も何度か「それ」は続き、その度に俺はマジでビビった。全然一向に慣れることはなかった。(時々頭を撫でられることもあったが、そういう時は寝癖がついていたようだ)


理事長という立場柄、風紀的なものをパトロールしているのかもしれない。

と考えた俺は以後、理事長の手を煩わせないためにも身嗜みに対してより一層気を付けるようになった。


が、俺が自分でネクタイ、髪型をきちんと整えるようになると、理事長は何故かわざわざ俺の教室までやって来て、今度は爪の手入れをし始めた。

いや、確かに今まで一度もそんなものやったことなんてないし、荒れているのかもしれないが、流石にマニキュアまで塗られては教師に叱られる…!と思ったものの、特にどこからも何も言われるようなことはなかった。

一体どういう力が働いたのか、怖くなった俺はそこで深く考えるのを止めた。


そしてある日の放課後には噂の美術室へと連れて行かれ、あれよあれよという間に靴を脱がされ、ペディキュアを施されてしまった。

理事長に足の手入れをさせるなんて…!?と怖れ戦いた俺は必死に断ろうとしたのだが、理事長に無言でじっと見つめられて観念するしかなかった。目は口ほどに物を言う、というが、あれは本当らしい。

その日、初対面だった袋井先輩が淹れてくれたココアがとても心に染みたのを、俺は今でもよく覚えている。


しかし、この流れ。このままでは不味い、ような気がする。何となく。


だから今日こそ、今こそ言わなければ。

そう決意した矢先、つい昨夜のことだ。


学校の帰り道、拉致された俺は指輪邸のバスタブに沈められたのだった。



「…それからわしゃわしゃと全身くまなく洗われました…風呂から上がった後も保湿クリームやら何やら、もう俺には何だかよく分からないものを色々と塗りたくられました…」


おかげで今日の俺の肌つやは絶好調、現在進行形で理事長がチークを塗っているところだ。

そんな俺達の姿を見た袋井先輩は、複雑そうにその顔を歪めながらも俺の前に無言でスムージーを置いてくれた。

あぁ、今日も美味しそうです。ありがとうございます。


そして他の方々、笑って見てないでこの状況どうにかしてください。皆さん探偵なんでしょ?本当お願いしますよ。マジで。





モブにはしんどいです。

(え、く、口紅?塗るんですか?俺男、)
(……………)
(せ、せめてリップとか、ダメですかね…?)
(……………)
(は、はい。すみません。もう全てお任せいたします…)
(……おい。もう少し頑張れよ、お前。)


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嘘つき、ロンリー。