三好と道連れ


※アニメ設定。
※『柩』後、生存√。











「お帰りなさい。」


そう出迎えたのは、いつものように先に部屋に戻っていたらしい同居人の男。

「ちょうど珈琲を淹れるところです」なんて言いながら、男はこちらの返事も待たずに二人分の準備を始めた。


きっと断ったところで結局はそれを飲む羽目になるだろう。

いや、そんなことよりも、だ。


「今日、街中で『お前』を見た。」


会話の前後を無視しての暴投に、だが男は相変わらずうっすらと微笑みを浮かべたまま表情を変えない。

見掛けたのなら声を掛けてくれれば良かったのに、なんて世間話を続ける気もないようだ。


恐らく俺の次の言葉を先読みし、それを待っているのだろう。


「正確に言えば、『お前によく似た雰囲気のやつ』を見た、だが。」


そこでようやく、男が声を出して笑う。


「少しは成長されたようですね。」

「…………」


不出来な生徒を褒める教師、というより、赤ん坊の寝返りを見守る大人といったところか。

だが流石に一年もあれば、赤子だって伝い歩きぐらいは出来るようになるものだ。

と主張したかったが、部屋の片隅に纏められた荷物を目に留めて諦めた。


(……でも、そうか…もう一年も経つのか…)


改めて時の経過を実感し、うんざりしてしまう。

近々行われるであろう「引っ越し」も、これでかれこれ何度目になるだろう。


国が変わり、言語が変わり、互いに呼び合う名前さえ変わった。

この先、あと何度同じことを繰り返すつもりなのか。


『僕達が目当て…というわけではないでしょうが、念には念を。ここでニアミスするも嫌ですからね。』


最初の移動の際、その理由を聞いた俺に男はそう答えた。

「何か」から逃げているのだな、と理解はしているが、未だに何故「僕達」なのかは納得に至っていない。


何故僕「達」と、そこに「俺」を含むのか。


(俺を巻き込む理由…普通に考えれば「報復」なんだろうが―…)



「どうぞ。」



目の前に置かれた珈琲に一瞬、思考が遮られる。

次いで、それを差し出す手の甲に残る傷痕に目が留まった。


「冷めない内に、どうぞ。」

「……あぁ…」


この奇妙な共同生活が始まったのはおよそ一年前、とある事故現場付近で目の前の男を拾ったのがきっかけだった。

それが同情心だったのか罪悪感だったのかは、自分でもよく解らない。


そして促されるままカップに口付ければ、思わぬその苦さについ眉を顰めてしまう。

そんな俺を見て、「分かりやすい人ですね」と男は嗤うのだった。




人形あそび

(この男をもってして「魔王」と称される人間がいるらしい)(が、そこから先はあまり深く考えないようにしている)


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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。