マサさんと友人
※元ネタ。
最近、少し湊の調子が悪いようだ。
といっても弓道のことではない。
そのため部活中の様子しか知らなかった俺は、静弥から相談を受けて初めてそれを知った。
静弥曰く、ふとした瞬間に何やら考え込んだかと思えば、その後落ち込んでいるように見える、と。
「って言われても、静弥は湊に対して少し過保護なところがあるからなぁ…」
「そんなことありません。」
そうきっぱり言い切る静弥は自覚がないらしい。
いや、自覚した上で「今はそれどころではない」と判断し、その話題を切り捨てただけかもしれない。
だが、仮に静弥の話が事実だったとして、ここで俺は一体何を期待されているのだろうか?
湊の悩みの種が日常生活にあるにしろ学校生活にあるにしろ、大人としての助言は出来るが、それより必要なのはもっと身近にいる友人達の協力、それこそ静弥が適任のような気がするが。
そんな俺の疑問を察したのか、真顔で「このことはマサさんに頼るしかないんです」と続ける静弥。
「実はマサさんのお友達の、白兎さんという方についてなんですけど…」
「白兎?」
その唇から思わぬ名前がこぼれ落ち、俺はますます訳が分からなくなった。
確かに白兎は高校時代からの友人だ。
元サッカー部で弓道には全く縁はなかったが、俺が「一万射」の見届け人を頼んだため、一時期夜多の森弓道場の常連となっていた。
その流れで湊とも知り合い、そこそこ親しくはしていたが―…
「それが、湊はその白兎さんに嫌われたかもしれないって落ち込んでいるみたいなんです。」
「…は?」
そう不思議そうに声を上げた白兎に、正直俺は少し安心していた。
つい数時間前、俺も静弥と話していて全く同じ反応をしたからだ。
「いや…え?何で?何でそんな話になってんの?」
「お前、この間道端で二人と会ったんだろ?」
「会った、っていうか俺が一方的に見かけただけで…声も掛けてみたけど、向こうには聞こえなかったっぽいし。」
「いや、湊達には聞こえてたらしいぞ?」
「え、…ってことは、むしろ俺の方が嫌われてね?」
声を掛けたのに無視された、となると確かにそういうことになるだろう。
自分で言いながら「ちょ、それは流石に傷付くわ…」と凹む白兎を宥め、何とか話を続ける。
本題はここからだ。
「その時、何て声掛けた?」
「別に…普通に『おーい。ナルミヤくーん』って。」
「それだ。」
その瞬間、キョトンとした表情の白兎の頭上に幾つかハテナマークが浮かぶのが見えたような気がした。
「お前、いつも『湊くん』って呼んでたろ?」
「だってマサがずっと『ミナトミナト』って呼んでたから、俺もついつられちまって…でもその時はその、セイヤくんだっけ?お友達が一緒にいたし、下の名前で呼ばれたら恥ずかしいかと思ったんだけど。」
「静弥に言わせると、仲良くなったと思っていた白兎さんから急に名字で呼ばれて湊はショックを受けた、ってことらしい。」
「まさか。」
「俺も流石にそれはないだろって言ったんだけどな…ちなみに『良かったらまた湊のことを下の名前で呼んでやって下さい』って静弥からの伝言だ。」
「…そのセイヤくんって子、ミナトくんの保護者か何かか?」
白兎の言葉に苦笑するものの、否定は出来ない。
代わりに「まぁ、静弥の考えすぎだろ。俺も一度湊と直接話してみるさ」と続けた。
だが、もしそれで駄目なら、本当に白兎の協力が必要になるかもしれない。
その時は
「なぁ、滝川。」
よろしく頼む、と口にしかけたそれを思わず飲み込んだ。
「どうよ?」
「……あー…確かに、今のはツラい。」
「まじか。」
じゃあ今度ミナトくんに会ったら謝らないとな、とひどく申し訳なさそうな白兎。
だがその前にまず、こちらに謝ってもらいたいと俺はそう思った。
得意技はフェイント!
(高校時代から味方をも振り回す攻撃力に定評のあるFWでした。)
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嘘つき、ロンリー。