シリウスと蛇寮の上級生


部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、白兎はほんの一瞬だけ動きを止め、それと共にその思考を止めた。

そしてすぐさま、そこそこ出来のいい頭をフル回転させ、現状の把握に努める。


ここは魔法学校ホグワーツ、スリザリン寮にある学友達と共有する自身の部屋、それは間違いない。

つい数分前に談話室で同室者の顔ぶれを確認しているので、部屋に誰もいなくても問題はない。


そうだ、ここは『スリザリン』寮で『誰もいない』はずだ。


それなのに何故、今ここに『グリフィンドール』の生徒が『一人いる』のか。


「…シリウス・ブラック、ここで、何をしている…?」


そう問い掛けながらも「愚問だな」と白兎は思った。

そして、どうやら自分はまだ少し混乱しているようだと判断する。


相手は二つ下のグリフィンドール生、『悪戯仕掛人』と呼ばれる悪童の一人。

一応自身とは遠い遠い親戚にあたるらしいが、親しくしたことはない。

むしろつい先日、後輩のスリザリン生が悪戯の標的にされるのを見るに見かねて助けに入り、手酷く返り討ちにした覚えがある。

向こうもそれをきっちり記憶しているのか、こちらを睨み上げる瞳は鋭く獰猛。


恐らくこれは、あの時の仕返しだろう。

だが、それを目の前のシリウスに問うのはやはり愚問だ。


白兎は溜め息を吐き、そしてまた口を開いた。


「ここで何をしている?ジェームズ・ポッター。」

「あれ?もうバレちゃった?」


魔法道具か何かで姿を消していたのだろう、突然自分の右隣に現れたグリフィンドール生に大して驚くことなく、白兎はもう一度溜め息を吐いた。


「…今回、どういう趣向なのかは知らんが二人ともここから出て行け。」

「えー?まだ何も、」

「さっさと出て行け。」


有無を言わせない白兎の様子にジェームズは苦笑混じりに肩を竦め、そして白兎の言葉に従い、部屋を出ようと扉に向かう。

その背中に「おい、」と低い白兎の声。


「俺の話を聞いてなかったのか?『二人ともここから出て行け』と言ったんだ。仲間もちゃんと連れて行け。」

「いやぁ、後はどうぞ若い者同士で。」

「何を言っているんだ、お前は。」


訝しげな視線をジェームズに向け、それから白兎は再びシリウスの方へと振り向いた。


そして猿轡を噛まされ、後ろ手に縛られたその姿を見下ろし、心底憐れみを感じるのだった。


「お前、スリザリンの方が良かったんじゃないか?」





お節介かもしれないが

「友人はちゃんと選ぶことだな。」

「失礼な!僕はシリウスのためを思ってこそ!」

「思ってこそ、縛り上げた?それは一体どういう思考回路なんだ?」

(どうでもいいから早くこの縄をほどけよ…!)


ただ友人の恋路を応援したかっただけなんです。


----------------
リクエストありがとうございました!



戻る

嘘つき、ロンリー。