セルティと新羅の義弟
岸谷白兎は岸谷新羅の、歳の離れた弟である。
正確に言えば、義母エミリアの連れ子なので義理の弟にあたる。
さらに言うならそのエミリアとも血縁関係にはなく、実はネブラ社において「何らかの研究対象」であった…という噂もあったりなかったりするのだが、今回それは特に関係ない。
とにかく、ここで重要なのは「岸谷白兎は岸谷新羅の弟」ということである。
「……だから、この『家族が増えました』ってのは間違ってるんじゃねぇのか?」
「私は嘘は言っていないよ?」
間髪容れずにこやかに返された言葉にほんの少しイラッとしたものの、言われてみればなるほど、確かに嘘は言ってないなと静雄はあっさりと納得した。
そして改めて、たった今手渡されたばかりのハガキに目を落とす。
現在自分達が居る部屋で撮られたのだろう、ソファに座る新羅とセルティの間で美味しそうにケーキを食べる白兎といった構図の写真に、先程静雄が指摘した言葉が添えられている。
確かに「弟」だって立派な家族には違いない。
が、これを見て勘違いしてしまうのも無理はなかった。
実際、既にこのハガキを手にした面々はすっかりお祝いムードと化していることを静雄は知っていたし、中には街中を歩いていた白兎に気付いて「それで?デュラハンの子供ってことはその首取れるの?」と嬉々としてそれを追い回していた情報屋がいたことも、知っている。
というかそれをぶっ飛ばし、ギャン泣きする白兎を回収した結果が現在に至る訳なのだが。
ちなみに臨也のアレは確信犯臭かったが、思い出すだけで血管がブチ切れそうになるので静雄はそれ以上考えるのを止めた。
代わりに写真から顔を上げ、二人から少し離れた場所に座っているセルティの方へと目を向ける。
正確に言えばセルティと、その膝の上に抱えられ、影で作られたブランケットですっぽり全身を包み込まれている白兎の方へ、だ。
どうやらセルティに慰められている内に泣き疲れたらしく、うとうとと今にも眠ってしまいそうだ。
時折もぞもぞと身動ぎし、居心地の良い場所でも見付けたのか、安心しきった様子でセルティの胸元に頬を預けてふにゃっと笑う白兎。
それにつられるように、静雄は無意識に目を細め―…
「ほら見てごらんよ、あのセルティの姿…溢れんばかりの母性に満ち満ちて聖母像もかくありやと言わんばかりの神秘的な光景!いや勿論白兎に場所を代わって欲しくないと言えば嘘になるのだけれど、仮にもし僕があのポジションに収まってしまったとしたらそれは最早禁断の、ぅがほっ!」
『子どもの前だぞ!教育に悪い!』
静雄がキレるより先に、当然のことながら影の手による制裁が下ったのだった。
家族が増えました。
(うっ…「子どもの前で」ってなんて妖しくも心惹かれるフレーズなんだ…!いや、でも本当真面目な話。セルティが望むなら、私は白兎を養子にするのも吝かではないからね?)
(『……新羅…』)
(あと白兎が「僕、弟か妹が欲しい」と言えば、大義名分を得て僕は堂々とセルティと思う存分、ぁべらっ!)
(ん…しんらおにいちゃん?どうしたの…?)
(『気にするな。それよりノドはかわいていないか?水分は小まめにとっておかないとな。』)
(ありがと。おかあさ…じゃなくて、えっと、セルティおねえちゃん!)
(『…………っ!』)
((……家族水入らずを邪魔するわけにもいかねぇし、俺もそろそろ帰るか…))
---------------
十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
戻る
嘘つき、ロンリー。