祖父と青年助手


「指定席を盗られた」と。

事務所に戻ってくるなり、そう憤慨するおじいさん。


はて、指定席とは?

一体何のことやら…と小首を傾げていれば、クイクイと袖口を引かれる感触が。


つられてそちらを見ると、相変わらず無表情ながらもどこか表情豊かな助手さんがグッと親指を立てていました。


…何でしょう、そのどや顔。
わたしには意味が解りません。

首はますます傾くばかりです。


あぁ、こんな時に白兎さんがいてくれれば、


「ただいま戻りました。」


正に噂をすれば影。

少々タイミングが良すぎる気もしますが、そこはご都合主義。とりあえずスルーしておきます。


「茶をくれ。」

「はいはい。」


…そして熟年夫婦ばりのやり取りも勿論スルーです。


「若先生達もいかがですか?」

「あ、お願いします。」

「……………」

「ん?あぁ、そうですね助手くん。お茶請けがあったらいいですね。」


何か探してきましょうか、と和やかに部屋を出て行こうとする助手さんコンビ。

その二人の後ろ姿を見送って、さぁこちらもテーブルの準備でもしておきましょうかと動き始めた、正にその時。


わたしはそれに気付いてしまいました。


「白兎さん。」

「はい?」

「腰のところに何やら葉っぱが…?」

「え?あぁ…さっき、ちょっとそこの草むらで妖精さん達のお昼寝を手伝っていたので…その時に付いたようですね。」


お昼寝のお手伝い?

と白兎さんの言葉を反芻した瞬間、ハッとひらめくものがありました。

第六感、いえ普段あまり活用されない脳味噌が無駄にフル回転したようです。


すっかりお茶会ムードと化した場のせいで忘却の彼方に消えかけていた伏線の数々が今、次々と鮮やかに甦ってきます。


盗られた指定席。

不機嫌なおじいさんと、助手さんが立てた親指。


そして、妖精さんのお昼寝を手伝った白兎さん。


その答えは―…




「…老人介護?あ痛っ」


無言のおじいさんからゲンコツを頂く結果となりました。










人間さんの、ゆうがなごご。

(素直に『膝枕』と言えんのか。)
(…言いたくないから無理矢理捻り出した単語がアレだったんですよ…)

(というか、孫の面前で臆面もなく言えるおじいさんに驚きです。)


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95500hitより。
キリリクありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。