祖父と青年助手
少々忘れがちではありますが、調停官第一助手である白兎さんは二十代半ばの好青年です。
その爽やかな雰囲気と愛嬌のある笑みに胸を撃ち抜かれた女性は数知れず、噂ではここ、クスノキの里にそのファンクラブなるものが存在するとかしないとか。
表向きには特定の恋人もいないため、今や結婚適齢期にある女性陣がその水面下で虎視眈々と狙いを定めている可能性もなきにしもあらず、と言ったところでしょうか。
…何も知らないということは幸せですね。
まぁ、それを知ったところで、Yの関係者が増えるだけかもしれませんが。
さて、わたしが何故こうして改めて白兎さんについて考察しているのかと言うと、
「おい、白兎を知らんか?」
「いえ?見ていませんが。」
嘘です。見ました。
それもつい数分前、事務所へ向かう途中。
妙齢の女性と、二人っきりでいるところを。
どういう事情であれ、それを告げた瞬間、ただでさえ衰退している人類の数がまた無闇矢鱈と減らされるような気がして、何となく口にすることは憚られてしまいました。
「そうか」と納得した口振りながらも、探るように突き刺さるおじいさんの視線が痛いです。
しかし、若い男女がいる光景を見て微笑ましく思うことはあれど、奇妙なものに感じるとはこれいかに。
内情を知る身とは言え、かなり毒されているようで少し複雑な気分になりました。
そもそも二人の関係は、どこかの何かの採掘現場から始まったと聞いています。
おじいさんが指揮する現場に、人手不足のため駆り出された白兎さん。
たまたまそこで出会い、趣味が合ったのかウマが合ったのか、どちらにせよ第三者から見れば仕事そっちのけで何をやっているのやらといった感じですが。
そう突き刺さる視線にも負けずにジト目で見つめ返せば、おじいさんは悪びれた様子もなく、いやむしろ心外そうに顔を顰めました。
「私はただ、私を本気にさせた責任を取ってもらっているだけだ。」
人間さんの、せきにんてんか。
(まぁ、なんて大人げない!)
---------------
120500hitより。
キリリクありがとうございました!
戻る
嘘つき、ロンリー。