ナオフミと犬系亜人01
買い物を済ませて店を出ると、案の定、そこに待っているはずの二人の姿はなかった。
「あいつら、どこに行ったんだ…」
「白兎が一緒なので大丈夫だと思いますけど……私、ちょっと捜してきます。」
「頼む。」
手分けして、というのも考えたが入れ違いになるのも面倒だ。
それに時間的にそう遠くには行けないだろうと判断し、ラフタリアの後ろ姿を見送ると尚文はそっと溜め息を吐き出した。
その瞬間、不意に傍らを通り過ぎて行った通行人の会話が聞こえてくる。
「さっき、向こうでガラの悪そうな男が子どもを―…」
「…………」
かくして、尚文の嫌な予感は的中した。
通行人が言っていた「向こう」へ来てみれば、小さな『子ども』が大きな声で泣いており、その前には『ガラの悪そうな男』が一人佇んでいた。
周囲はヒソヒソと話すばかりで何もしようとせず、尚文はそのことに軽く苛立ちながら舌打ちすると、件の二人へと近寄って行く。
男は背中を向けていてよく解らないが、背格好は尚文と大して変わらなさそうだ。
ただし、普通の人間ではない。
「おい。」
その背中に声を掛けた瞬間、誰かが短く息を飲む。
男が、ゆっくりと振り返る。
眉間に皺を寄せ、尚文を睨み付るようにしながら口を開き、
「ナオフミさまぁ…っ…」
ぶわっと目元に涙を溜めたかと思えば、一瞬にしてそれは決壊した。
あまりのことにギョッとする周囲を無視し、尚文はさらに近付く。
「おれっ、おれ何もっ、ただっ…!」
「分かってる。言わなくていい。」
見れば、泣いていた子どもも白兎の様子に驚いたらしく、いつの間にか泣き止んでいる。
それを軽く手を振って追い払った。
フィーロは近くにいないようだ。
恐らくここでこうして白兎が足止めを食らっている間に、見失ってしまったのだろう。
そのことが白兎の涙腺に拍車を掛けているに違いない。
「行くぞ。」
「うぅ…っ…」
ひとまずフィーロの回収はラフタリアに任せることにして、尚文は白兎を促して歩き出す。
主人の顔を見てすっかり緊張の糸が切れたらしく、ぐすぐすと目元を擦り、鼻を鳴らしながらも尚文の後に続く白兎。
鋭い三白眼に、尖った黒い犬の耳。
どうしてもシベリアンハスキーを彷彿させるその姿は見るからに獰猛で、戦闘中は頼もしい限りだが、それ以外だと今回のような弊害が多々ある。
その上、その外見と中身の落差は激しかった。
中身はラフタリアどころか、時にフィーロからも「弟」扱いされるほど幼い。
「ひっく…っ…ぅ、ご、ごめんにゃにゃい…」
「………」
噛んだ。犬なのに猫語。
なんて内心ツッコミを入れつつ、溜め息を吐きながら足を止める尚文。
振り返り、白兎を見つめてしばし考え込む。
「う…?あの、ナオフミさ……うぎゃ!?」
そして無言でその犬耳ごと、グシャグシャと髪を乱暴に掻き撫でた。
「いたっ!?痛いですっ!ナオフミさまっ!」
「…………」
「ナオフミさまっ!?」
驚いた白兎は先程の子ども同様泣き止んだが、それでも尚文の手は止まらない。
その後、結局ラフタリア達と合流するまで白兎は抵抗できず、されるがまま、頭がボサボサになるまで撫でられ続けたのだった。
番犬未満。
(でも、そのしっぽはふわふわゆらゆら)
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嘘つき、ロンリー。