ナオフミとモトヤスと犬系亜人


尚文達がこの町に辿り着いたのは、今日の昼頃のこと。


特にこれと言った目的もなく、今のところ次の『波』の話も出ていない。

だから、これは久し振りにのんびりできそうだな…なんて思ったのも束の間。


どうやら現在ここに他の勇者一行も滞在しているらしい、と知ったのは、使いに出ていた白兎が一人戻ってきた時だった。


『なんか、怖い顔した女の人達からにらまれて…あ、そう言えばおれ、槍の勇者さまから「ナオフミさまに似てる」って言われました!』

『…………』


それが一体どういう話の流れだったのかは分からないが、尚文と元康の関係性を考えれば間違いなく「それ」は誉め言葉ではなかったはず。

とは思ったものの、その尻尾が嬉しげに揺れるのを見た尚文は指摘するのも憚られ、その時はただ「そうか…」と白兎の頭を撫でるだけに留めた。



のだが。



「何だ、フィーロちゃん達は一緒じゃないのか。」


必要最低限の挨拶すらなく、尚文と白兎が呼び止められたのは少し前のこと。


目当てのフィロリアルがいないと分かったのならさっさと立ち去ればいいものを、何故かこの場に留まり続ける槍の勇者に尚文の機嫌は降下の一途を辿っていた。

その上、当の元康はそれに気付いていないらしく、「男だけで何が楽しいんだ」と言いつつも先程から気安げに白兎の頭を撫で回して、ますます火に油を注ぐばかり。


そんな二人の間で白兎は居心地悪そうにし、元康の取り巻き達はその背後の、やや離れた位置から恐ろしげな表情でこちらの様子を窺っていた。


「……白兎、帰るぞ。」

「え、…もう、ですか……?」


いつものように夕食前の腹ごなしがてら宿を出て、未だ30分足らず。

白兎が戸惑うのも無理はなかったが、尚文は構わず歩き出した。


慌てて白兎がその後に続き、さらにその後方では元康が何やら声を上げているが、それも一切無視だ。


「あの、ナオフミさま…?」

「…そう言えばさっき、ドッグランでも出来そうな空き地があったな。」

「どっぐ…?」

「明日はそこに行ってみるか。」


ようやく追い付いた白兎は不思議そうに首を傾げながらも、尚文の言葉にただ「はい」と頷いた。



その翌朝。



「いくぞー、白兎!」


尚文と白兎の間にどこからともなく乱入してきた元康は珍しく一人で、そして何故かしっかりゴムボールのようなものを持参していた。


やたら張り切る元康を前にし、戸惑いながら尚文の様子を窺う白兎。

その瞬間、尚文の手の中で先程拾ったばかりの枝がバキッと音を立てて折れた。


「いつもより少し遅くなる」とラフタリア達に断りを入れ、宿を出てもうすぐ30分が経過。


空は気持ちの良い快晴だった。




猛犬注意。

(特に散歩の邪魔をする、大型犬にはご用心)


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嘘つき、ロンリー。