ナオフミと犬系亜人


※唐突に夢主が子犬化しているのでご注意。










まず最初に「自分は寝惚けているのだろう」と思った。

次に「これは夢の続きで、自分はまだ眠っているのかもしれない」と考えた。


そうしてしばらく待ってみたものの、一向に目の前の光景が変わることはなく、とうとう尚文は諦めて現実を受け入れることにした。


ここ数日寝泊まりしている見慣れた宿屋の一室で、見慣れぬ子犬と対峙している、という現実を。


(…いや……何となく見覚えはあるが……)


ベッドの上で、尚文のことを見上げながら尻尾を振る小さな姿。

一目見た瞬間から尚文の脳裏にはある疑念が浮かんでいたが、流石にそんなことは有り得ないだろうと打ち消すように軽く頭を振った。


「……はぁ。お前、一体どこから入って来たんだ?まさか白兎が中に、」

「わん!」


そもそも本来のベッドの使用者はどこに行ったのか。

なんて改めて部屋の中を見渡していると、それまで大人しくしていた子犬が突然吠え、尚文は一瞬虚を突かれてしまった。


今のタイミングはまるで―…


「……白兎?」

「わん!」

「……………」


名前に反応している、ように聞こえた。


「……ポチ。タロウ。クロ。」

「わう?」

「モトヤス。レン。イツキ。」

「くぅん…?」


『偶然』を確認するため、思い付く名前をひたすら並べ立ててみるが、件の子犬は不思議そうに首を傾げるだけ。

そこでもう一度「白兎」と呼び掛けると、やはり返事が、ある。



まさか。



「まさか、お前……本当に白兎なのか…?」

「わんっ!」

「…………」


正解!と言わんばかりに一際元気な返事。

それと同時にぶんぶんと勢いを増した尻尾に、尚文は思わず額を押さえた。


確かに常日頃から似ているとは思っていたが、まさか本当にシベリアンハスキーになるとは。

そう言えば昨日、「通りすがりの見知らぬ老婆から飴をもらった」という報告を聞いて叱った覚えがあるが、あれが関係していたりするのだろうか。


「……だけど、何で子犬なんだ?実年齢より精神年齢に引っ張られたのか?」


ナオフミ様、引っ掛かるところはそこじゃないです。

この場にラフタリアが居れば、そうツッコんだのだろうが、生憎女子部屋は隣。


なのでツッコミ不在のまま、尚文は一人推論を重ねながら、とりあえずその小さな頭をぐりぐりと撫で始めた。

それはもう、存分に撫でた。


途中力加減が強すぎたらしく、とうとうマットの上で踏ん張りが利かなくなった白兎が「きゃうっ」と悲鳴を上げ、ころん、と転がる。

黒い背中が隠れ、代わりに真っ白な腹部を露にした姿はまるでオセロのようだ。


そしてひょこひょこと短い脚を動かして、必死に起き上がろうともがく白兎を見守っていた尚文は、自然と自身の口元が緩んでいることに気付かなかった。






こいぬゆうぎ。

(ドアがノックされるまで、あと少し)


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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。