夏村と鍛冶屋


熱せられた作業場を一歩出れば、無意識にほうっと息を吐く。

と同時に、白兎は肩に掛けていた大鎚を振り下ろした。


ガキン。


「…いきなり何をする。」

「正当防衛だ。今の俺の前で、その髪型は凶器に近い。」


ギリギリと、大鎚と槍を挟んで睨み合い。

だが一方的に殺気を放っているのは白兎だけで、対する夏村は呆れたように目を細めるだけだ。


「どいつもこいつもちゃらちゃらちゃらちゃら髪伸ばしやがって…切る気がねぇならその頭ごと取ってやらぁ。」


ふと夏村が何かに気付く。

どいつも、こいつも?


「まさか、左門殿にも以前同じことを…?」

「例外は認めねぇ。」


潤一郎でも許容範囲外だ。哲馬を見習え、哲馬を。

そう繰り返す白兎は知らない。


突然襲撃を受けた左門がその日一日、「私が一体何をしたと言うのだ!?」と一人ぐるんぐるんテンパっていたということを。


「で、こんな里外れまで何しに来やがった?刃毀れでもしたか?なら試し切りだ。まずその髪刈らせろ。」

「いや…そろそろ休憩だろうと思って、差し入れを持ってきた。」


対峙しているにも関わらず、つい、と夏村の視線が白兎から外される。

つられて白兎もそちらを見た。


すると傍らに置かれていたのは、タオルと湯呑み。

そこでようやく白兎は大鎚を引き、


「なんだ。気が利くじゃねぇ、か…」


そして再びそれを振り下ろした。






その冶屋、取扱注意

(おい、何であの湯呑み、湯気が出てんだよ。哲馬を見習え。あいつなら氷入りのよく冷えたやつを準備するぞ。)
(暑い時には熱いものを飲んだ方がいいと聞いた。)
(そうだよ、白兎くん。急に冷えたの飲んだら体に悪いんだって。)
(なるほど。それでお前は微妙な温さの水を持ってきた訳か、潤一郎。どうでもいいがお前、いつからそこに居やがる?)


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アンケートより。
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嘘つき、ロンリー。