桃矢と友人
「明日。」
「駄目だ。」
「明後日。」
「無理。」
「…明明後日。」
「バイト。」
「……お前、バイト入れすぎじゃね?」
なかなか噛み合わないスケジュール調整よりも、そっちの方が気になって問い掛ければ、「ほっとけ」と不機嫌そうにそっぽを向く桃矢。
その子どもみたいな態度に、もう一人の友人がこの場に居れば苦笑しているだろうなぁ、と想像して思わず苦笑してしまった。
「じゃあ、いつなら空いてんの?」
「今日。」
「俺が無理。この後、バイトだわ。」
「テメェ、人のこと言えねぇだろうが。」
「あーあ…どうすんだよ、これ。」
そう言って掲げてみせたのは、今話題の映画のチケットが二枚。
知り合いから貰ったは良いが、現在少し持て余し気味で困っている…フリをしている。
「折角だし、使わないのは勿体ないしなぁ…」
「そうだな…」
「うーん…」
「……………」
とうとう相手をするのも面倒になったのか、黙り込んでしまった桃矢に対し、俺は一体何を望んでいるのだろうと改めて考える。
予定をキャンセルして、自分を優先して欲しいのか。
それとも「他の誰かと行け」とばっさり切り捨てて欲しいのか。
自分でも、よく分からない。
「っ、あー…」
ただ、これ以上粘っても話は先に進まないことだけははっきりと分かっていた。
だから結局、溜め息一つ吐き出して、二枚とも桃矢に差し出す。
「…何だよ?」
「これ、さくらちゃんに渡してくれよ。そしたら友達か、雪兎でも誘って行くっしょ。」
「いいのか?」
「だって勿体ないし。あ、それとも雪兎に渡して、さくらちゃんを誘うように言った方がさくらちゃんも喜ぶか?」
「……いや、さくらに渡す。それで、あたふたとゆきを誘う姿を笑ってやる。」
「うわ、悪趣味!」
そして二人して、何事もなかったかのように笑い合った。
素直になれない
「…これ、本当は白兎と一緒に行く予定だったんじゃない?」
そう言って、ゆきはさくらから受け取ったチケットを俺に見せながら、いつものように穏やかに笑ってみせた。
それがどことなく寂しそうに見えたのは、きっと俺の気のせいだ。
(まるで、早く素直になりなよ、とでも言いたそうに)
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六周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。