五次槍兵と教会の管理人


「言えよ、望みは何だ?」


分かっている癖に、そう言って笑うこの英霊のことが俺は未だによく解らなかった。


「…とりあえず、その箒を返してください。」


言ったところでどうせ聞き入れてもらえる訳がない、とは思ったものの言わなければ話が先に進まない。

そして思った通り、言ったところでランサーは笑ったまま、それを返してはくれなかった。


ここで、タイミング良く神父が通り掛かってくれることを望めば良かったのだろうか。

だが生憎、先程外出するその姿を見送ったばかりだ。


さて、どうしたものか。

次の言葉が続かないでいると、ランサーはかの槍のようにそれをクルクルと操り始めた。


ゲイ・ボルグでも何でもない、ただの竹箒。

いつ壊れるかと気が気ではなく、右へ左へと動くそれをひたすら目で追う。


「ランサー、」

「そんなに大事か?」


大事に決まっている。

ここ数日で何本かあった箒は諸事情により壊れてしまい、次を用意するまではそれが最後の一本なのだ。


だから、


「白兎?」

「返してください。」


それしか言えなかった。

代わり映えのない俺の反応に飽きたのか呆れたのか、ようやくランサーは笑うのを止め、代わりにただ舌打ちした。


「ったく、庭の掃き掃除なんてやってる場合かよ。」


それ以外に何をやれと?


「俺のマスターなんだろ?」

「他のマスター達の手前は、ですよ。」


実際に俺がマスターだったとして、従う気などさらさらないだろうに。

そう喉まで出かかった言葉を飲み込み、代わりに溜め息を吐き出した。


しかし竹箒同様、魔術師でも何でもない俺にマスター役など、言峰神父も酷なことを考えるものだ。

よほど手駒が足りないに違いない。


それも、捨て駒が。



「ところで、怪我の具合はどうだ?」



「怪我?」


急な話題転換に不意を突かれ、思考が止まる。

つられるように己が両手に視線を落としたのは、ほんの一瞬。


そして、次の瞬間。


顔を上げれば、そこにはもう誰も、何もいなかった。


やっぱり、よく解らない男だ。


「……あぁ。」


ただ風が、落ち葉を舞い上げていた。







それを手に入れる方法

(結局、それが俺の手に戻って来ることはなかった)
(けれど、)


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七周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。