愛染とスタッフ
「うおぁっ!?」
と、自分自身の声に驚いた勢いで飛び起きた。
(な、んだ、いまの、ゆめ……?)
ばくばくと心臓が煩く、荒い呼吸はなかなか整わない。
それに何となく、身体もだるい。
まるで何か激しい運動でもした直後のような―…
「どうした?」
「い、や、何か、すっげー怖い夢見ちゃっ、て……」
ふと声につられて隣を見れば、枕に頬杖を着いた愛染さんが呆れたようにこちらを見上げていた。
あ、なんかこの構図、見覚えあるわ。
確か少し前に撮影したポスターか何かで、さて何の宣伝だったっけかなー……
………って、ちょっと待て。
「……あいぞめさん?」
「あぁ、お早う。」
「あ、おはようございます…」
じゃなくて。
え、本当に愛染さん?『THRIVE』の?愛染健十さん?本当の本当に?
なんて混乱する俺を余所に、身体を起こした愛染さんは「先、シャワー借りるぞ」と言って、さっさと一人浴室の方へと行ってしまった。
その後ろ姿は、何一つ身に着けていなかった。
(え、ちょ、は、はだか?何で?何で?何で!?)
というか、よく見たら俺も裸だった。
徐々に頭が覚醒してくると同時に、さっと血の気が引いていく。
裸の人間が二人、同じベッドの中に横たわっていた、ってことはつまり…?
(え、えぇぇぇっ!?嘘だろ何も覚えてないぞ一体何があった昨日の俺!?)
そもそも愛染さんとは簡単な挨拶とか事務連絡ぐらいしか言葉を交わしたことがなく、大して親しくはない。
いや、仮に親しかったとしても男同士でベッドインなんてありえないが!
と、不意にそれに気が付いた。
(そうだ、俺が今いるのは狭いベッドの上…)
それも狭い部屋の中、要は見慣れた自分の家だ。
そんな小汚ない場所に天下のアイドル様がいる訳がない…ということは、これは先程まで見ていた夢の続きに違いない。
もしくは幻覚、でなければこの状況は考えられないし考えたくもない。
(……となると、これは俺の願ぼ…いやいやいや、これはあれだ、いつかの宣伝ポスター!あれが印象に残ってて、だからついうっかりこんな夢を…!)
「白兎。」
そうこうしている間に戻ってきてしまった愛染さんから親しげに名を呼ばれ、ギギギッとぎこちなくそちらに顔を向ける。
今度はちゃんと下を穿いているが、上は裸のままだ。
「ほら。」
「ど、どうも…」
目のやり場に困りながらも差し出されたペットボトルを反射的に受け取り、思わず唸った。
愛染さんが普段愛飲している水素水。
以前コンビニへ買いに走った覚えがあるそれは、夢とは思えないほどリアルな冷たさで、
「まだ寝惚けているみたいだな…」
フッ、と聞こえた笑い声。
顔を上げると愛染さんは優しく俺の前髪を掻き上げ、そのままその手で頬を撫で、そして―…
ドッキリですよねそうですよね!
(ただの現場スタッフに仕掛けて何のメリットが、とか深く考えたらダメだ)
(じゃないと、さっきの女の子に刺される夢が正夢になっちまう…!)
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嘘つき、ロンリー。