ダーリンとクリオネ


※海洋生物主。
※なお、ここに登場するアニマルはフィクションです。実際の生態などとは異なる場合があります。










アザラシには、気になることがあった。


「〜〜もうっ!ダーリンのバカバカバカッ!」


いつものように素っ気ない『ダーリン』の態度に憤慨し、いつものようにその巨体をペシペシと叩くキャシー。

その光景を、いつものように「相変わらず仲が良いね」と微笑ましそうに眺めるシロクマの隣で、いつものようにガクブルと見守りながらも、アザラシは『あるもの』が気になって仕方なかった。


(何だろ、アレ……?)


『ダーリン』の額の辺りにポツンとある赤い点、のようなもの。

真っ黒な身体には少々目立つそれは、だがこれまで、他のシャチ達には見たことがない。


とは言っても、そもそもシャチの姿を見かける時はほぼほぼ死ぬ時であり、「見たことがない」に越したことはないのだが。


などとアザラシが考えている内に、キャシーはまた、いつものようにベシッと弾き飛ばされ、



「まったく、暴力はいけないな…」



「え、」


唐突に聞こえてきたそれに思わず驚きの声を漏らしたのは、アザラシだったか、シロクマだったか、その両方か。

両者は自然と顔を見合わせる。


「大丈夫かい、キャシーくん?怪我はないかい?」

「あぁん!やっとデレてくれたわね、ダーリン!」


ダーリン?

優しい言葉を掛けられ、嬉しそうに身を起こしたキャシーは確かにそう応えた。


(いや、でも、今のって……)


「フフフッ、驚いた?普段はつれないダーリンだけどね、時々こんな風にすっごく優しくなるの!ジェントルなの!」


その後も「くーでれ」だの「ぎゃっぷもえ」だの、よく解らない力説を奮うキャシーだったが、残念ながらアザラシ達の耳には最早何も入ってこない。


『ダーリン』の額の、赤い点。

よくよく目を凝らしてみると、何やらその辺りに透明なものが一緒にぺたりと張り付いている。

かと思えば、ひらひらとヒレのようなものが揺れ動き、「お初にお目にかかります」とまた声が。


再度、アザラシとシロクマは顔を見合わせた。


(あれはジェントル、というよりエンジェルなんじゃ…?)


そこで「以心伝心だね」とポッと頬を赤らめるシロクマはとりあえず見なかったことにして、(ペンギンの目が悪いっていうのは本当なんだなぁ…)とアザラシはしみじみ思う。


「うるせぇ。」

「アッー…!?」


そして、もう一度キャシーを弾き飛ばし、いや、海へぽちゃんと放り込んだ『ダーリン』はやはり、誰がどう見ても立派な「海のギャング」だ。

キャシーの言う、「ジェントル」にはあまりにも程遠い。


「ああ、なんてことを。大丈夫かな?キャシーくんは…」

「大丈夫だろ。放っとけ。」

「ところでダーリンくん、僕としてはそろそろ水中に戻ってくれると有り難いんだが。」

「…お前までダーリンって呼ぶんじゃねぇよ。」

「ふふっ、照れなくてもいいじゃないか…ああ、それではご両人。お騒がせして申し訳ない、僕らはこの辺で失礼するので。」


そう挨拶すると、返事もまたずに海へと戻っていく『ダーリン』。

その後ろ姿を見送ったアザラシにはやはり、どうしても『それ』が気になったのだった。




バミューダはここにあったか

(謎の三角関係?)
(というよりカオスだ…!)


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嘘つき、ロンリー。