伊藤先生と勇気の同級生04(+勇気)


「勇気、」と声を掛けられて振り返ると同時に、差し出された『何か』。

反射的にそれを受け取り、そしてそれが何なのか気付いた瞬間、「うわっ!」と危うく落とし掛けてしまった。


そんな俺の反応に驚いたのか、一瞬目を丸くしたものの、すぐにニヤニヤと笑い始める智。


「何だ、勇気。お前それ、知ってんの?」

「い、いやぁ…」


改めて見れば、直視するのが少し憚られてしまうような、見覚えのあるDVDのパッケージ。

ただそれは結構前のことで、その時『それ』を持っていた相手も違う。


「智、どうしたんだよ?これ…」

「さっきクラスでコソコソしている奴らがいたからさ…ちょっと借りてきた。」

「借りてきた、って…」

「ってことで生徒会長、後はよろしく。」

「は、?」

「俺はこれから用あるから。」


言いたいことだけ言って、さっさと立ち去ってしまった智に、置き去りにされてしまったのは俺と、問題のDVDが一枚。


そりゃあ一応生徒会長として、こういう風紀の乱れは見逃せない。

智もそれが分かっていたから、わざわざこれを俺のところまで持ってきたのだろう。


だけど、


(どうしよう…こういうのって先生に渡すべきなんだろうけど……榊先生、はちょっと怖いしなぁ………)


かと言って「伊藤先生」に渡すというのも、DVDの内容を知っているだけに躊躇してしまう。


なら、いっそのこと―…






「それで、俺のところに?」

「う、うん…」


元の持ち主に返すのが一番。

とは思ったものの、久し振りに白兎を前にするせいか、妙に緊張する。


ほんのり顔が熱くなっていくのを自覚しながら、それでも何とか「出来れば処分して欲しい」と伝えると、白兎は手にしたDVDを見下ろして少し考える素振りを見せた。


「実はこれ、もう俺のじゃないんですけど…まぁ、いいですよ。後はこっちで適当に処分しておきますから。」

「良かった!ありがとう、白兎!」

「別に会長が礼を言うことじゃ、……」


白兎が顔を上げた瞬間、その言葉が不自然に途切れる。

視線も俺から外され、どこか別の場所を見ているような気がした。


「白兎?」

「…むしろ、俺が会長にお礼した方がいいですかね。」

「え?」

「ほら、『拾ってくれた人にはお礼に一割』って言うでしょ?」

「あ、いや!俺は別にそんなつもりじゃ…!」


そもそも俺が拾った訳じゃないし!と続けるより先に、さっさと歩き出してしまった白兎の後を慌てて追う。


でも正直少しだけ、『お礼の一割』が気になっていた。





好奇が招いた好機

(そして「それ」が気になったのは、どうやら俺だけじゃなかったらしい)


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嘘つき、ロンリー。