シンタローと弟
ガンマ団総帥マジックには三人の息子がいる。
父親に最も溺愛されている長男シンタロー。
その秘めたる力の暴走を恐れられ、幼き頃より幽閉されている三男コタロー。
そして、これもあまり公の場に姿を現すことはないが、次男の―…
眩いばかりの閃光、とほぼ同時に響き渡る凄まじい轟音。
少しばかり遅れて吹き荒れた爆風は幾分熱気を帯びていたが、その場にいた全員はむしろ寒気を覚えた。
いや、例外がただ一人。
その人物は暴風のせいでボサボサに乱れた髪に舌打ちしつつ、軽くそれを整え終えると振り返ってそこにある顔ぶれを見渡した。
「えっと、それで何のお話でしたっけ?」
あぁ、そうでした。皆さん、総帥がお呼びです。どうぞこちらへ。
と何事もなかったかのように一同を促して、一人さっさと歩き出し―…
「いやいやいや、待って白兎くん。ちぃっと待つっちゃ。」
「え?あぁ、もしかして皆さん、引いてるんですか?アレがブラコンを拗らせているのは今に始まったことじゃないでしょう?あんなもの、サラッと流して下さいよ。」
「オラ達が引いでるのはそごでねェ。おめがアレに…というか、シンタローに向がって放った眼魔砲だべ。」
「は?がんまほう?何ですか、それ?」
「あくまでもすっとぼける気ィどすな…なんて恐ろしいお人や…!」
トットリ、ミヤギの言葉をのらりくらりとかわしていたその顔が、アラシヤマの一言に一変する。
「恐ろしい?誰が?」
ガンマ団総帥マジックの次男、白兎。
どちらかと言えばやや細身で事務方に所属し、現場に出ることがあっても主に後方支援を担当する青年。
だが今はそんな彼を、その瞳孔開かせた殺気を前にして、殺し屋軍団の面々は思わず後ずさってしまった。
「確かにアレは小さい頃から面倒見が良くて、勉強や格闘術の他にも掃除、炊事、洗濯と様々なことを教え込まれてきました。てっきり一人でも逞しく生きていけるように、という弟を想う兄心なのだろうと思っていれば、はなよめしゅぎょう?おれいろにそめる??最近ではそこかしこで団員を捕まえて『オレと白兎の新婚生活について』なんて話して聞かせてるらしいですね。皆さんも聞かされたんでしょう?一緒に風呂入って?一緒に寝て?『まッ、そこは今と大して変わんねぇんだけどなッ!』ってドヤ顔で一体何考えているんでしょうね?頭沸いてるんじゃないですか?とりあえず今のところはまだコタローの方に被害はないようですが、暴走でも何でもしてとにかく早く逃げろと忠告しなければ、いやその前にアレの息の根を止めるのが先決かと思い直して今回実行に至った訳ですが、それで一体誰が恐ろしいと?」
アラシヤマ、ミヤギ、トットリと順に白兎から目を逸らしていく中、それまで黙って静かに話を聞いていたコージがようやく自身の顎を擦りながら口を開いた。
「どっちもどっちかのぉ…」
「!?ばっ」
止めに入ろうとしたのは誰だったのか。
直後放たれた、本日二度目のタメなし眼魔砲により遮られ、残念ながらそれは定かではない。
みんな知っている。
(それが彼が表に顔を出さない、いや、出せない理由)
(だが、誰かは言った)(あれはただの照れ隠しだと)(そして再び爆音が、)
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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。