杉元と刺青の男
※元ネタ。
『願いが叶う刺青?』
『あぁ。おまけに強運が味方してくれるっていう代物だ。だからお前らが探している、そのアイヌの金塊ってやつもすぐ見付かるかもな。』
杉元がその白兎という男を認める気になったのは、そんなアシリパとのやり取りを聞いたからだ。
別に強運がどうのという訳ではなく、ただアイヌの少女を気遣ってみせる様子に好感を持った。
少なくともその強運にあやかろうと、隙あらば白兎の荷物から金を掠め盗ろうする脱獄王などより信用出来た。
ちなみに当の白石はと言えば、先程も盗んだ金を持って賭場へ駆け出そうとしたところ、何もない場所で一人転倒して顔面強打。
そして何事もなかったかのように散らばった金を拾い上げ、悶え苦しむその背中をとどめと言わんばかりに踏みつけたのは勿論、白兎だ。
犬のような悲鳴が上がった。
「だけど本当すげぇな、それ。」
「あ?っていうか杉元てめぇ、黙って見てねぇでクソ石の犯行を止めろよ。」
「えー?どうせ成功しないんだし、別によくない?」
「よかねぇよ。」
白石もその身体に件の刺青さえなければ、迷うことなく白兎と同じものを入れていただろう。
なんだったら俺も入れたい、と軽い気持ちのやや本気で杉元は思った。
上手くいけば、白兎と自分とでご利益二倍。
ついでに「二人お揃いだね」なんてアハハウフフと笑い合う姿まで幻視していると、妄想がだだ漏れしたのか、「止めとけ止めとけ」と白兎が顔を顰めて手を横に振ってみせた。
「そんないいもんじゃねぇからな、これ。ツキが続く分、後で絶対ロクなことにならねぇ。」
「そうなの?」
「現に、今こうしてしっかりとお前らに巻き込まれてるじゃねぇか。」
「何だよ。それじゃあ、まるで俺達が」
反射的に言い返そうとして、ふと杉元はそれを思い直した。
初めて白兎と出会った時、「少々」強引に刺青を確認したためにお互いにそれなりの怪我を負った。
その後も『奇妙な刺青』の噂を追って二度、三度と行き着いた先にいたのはやはり白兎ばかり。
最終的には「紛らわしい!」ということで仲間に引き入れることにしたのだが。
『もう誤解を解くのも面倒だしな…別にいいぜ。』
白兎の方は白兎の方で、杉元達と一緒にいるところを目撃され、どうやらその仲間だと勘違いされてしまったらしい。
他の刺青人皮を狙う連中に何度か襲われて大変だった、という話だ。
大事に至らなかったのは刺青のおかげかは分からないが、だが確かにそうなったのは総て刺青のせいだ。
「杉元?」
「…その話、確かアシリパさんにはしてなかったよな?」
「まぁ…わざわざ不安にさせる必要もねぇだろ。」
その瞬間、杉元の中で「意外といいやつ」から「かなりいいやつ」に格上げされた白兎。
なのでとりあえず、その『願いが叶う刺青』を入れた経緯から話して聞かせてもらおうと、杉元はそう思ったのだった。
運の悪い男
(…別に、聞いたところで面白い話じゃねぇよ。)
(そう言って、白兎が話すことは最期までなかったが)
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嘘つき、ロンリー。