ザインとハーフエルフ
酒も煙草も博打も(あと女性も少々)嗜むザインに対し、仲間達から向けられる視線は時折「破戒僧」と冷ややかだ。
中でも特に魔法使いの弟子のそれはより一層冷たく、辛く、何度心挫けそうになったか知れない。
それでもザインが今なお己の悪習を止めることが出来ないでいるのは、今更生き方を変えられるほど素直な性格ではない、というのも勿論あるが。
「ただでさえ短い人間の寿命を、自分から更に短くしてどうするんだ?」
広場の片隅に腰を下ろして一休みしていたところ、そう呆れたような声が頭上から降り掛かった、と思うと同時に咥えていた煙草が取り上げられる。
つられるように顔を上げれば思った通り、最近パーティーに加わった『旅人』の姿に、ザインは口元が弛みそうになるのを何とか堪えた。
「おいおい、それ火ぃ着けたばっかりなんだ。返してくれ。」
「こんなもの、何がうまいんだか…」
「吸ったことあるのか?」
「まぁ、そこそこ長生きしているからな。それなりの経験はあるさ。」
そう言って肩を竦めてみせる白兎はザインと変わらぬ年頃に見えるが、実際にはザインの倍以上。
ハーフエルフで、人間のものより尖った、エルフよりはやや丸みを帯びている耳には幾つものピアスが開けられている。
それらもまた、白兎の言う「それなりの経験」なのだろう。
詳しい話はいつか酒の席で聞くとして、とりあえず今は取り上げられたものを取り返そうと手を伸ばした矢先。
ザインの手から逃れるように持ち上げられたそれは、そのまま白兎の唇に差し込まれた。
(ぁ……)
あまりに自然な流れに、声も上げられなかった。
一呼吸、二呼吸置いて、すぅ…と吐き出される紫煙に目が奪われる。
「…やっぱり、俺はあまり好きじゃないな。」
ぽつりと呟くと白兎はしばらく手にした煙草を見つめ、ほんの一瞬視線をさ迷わせた。
捨てる場所に迷ったのか、結局「ほどほどにしておけよ」とザインの手に戻される。
「そう言えば、フリーレン達を見かけたか?」
「え?あ、いや…」
「そうか、ならもう少しその辺を歩いてみるかな。それじゃあ、また後で。」
返事も待たずに歩き出した白兎に、一拍遅れで我に返ったザイン。
そして、思わず頭を抱える。
顔が、熱い。
「俺にどうしろと…?」
未だ手の中で煙くゆらせるそれに気を取られてしまっていたザインは残念ながら、足早に去って行く白兎の、その耳の様子に気付くことはなかった。
オナジアカイロ
(お互い、まだまだ若かった…という話)
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嘘つき、ロンリー。