隼と『常連客』


客の少ない時間帯に店を訪れ、片隅の席に腰を落ち着けておよそ一時間。

軽食を済ませた後は大抵本でも読みながらコーヒーを二、三杯。


店内によく馴染んだその『常連客』の姿に、最初の頃こそ警戒していたうちのウェイトレス達も今ではすっかり普通に接するようになった、と思う。


恐らく、未だそれを意識しているのは俺ぐらいだろう。

何かすればすぐに追い払ってやろうと身構えていたが、今のところその理由が見当たらず、正直少し戸惑っている。


(…まぁ、確かにどこぞのクソジジイやらバカ孫やらなんかよりはずっとマシ、だが…)


その回し者、というのがどうも気に食わないんだが。


『ちょっと様子見てこい、って言われただけなんですけど…いやー、ここは居心地が良いすね。可愛い子ばかりだし、はやっちくんが本当羨ましい。』

『…止めてください、それ…』

『あ、勿論、はやっちくんも可愛いすよ。』

『っな、誰もそんなこと言ってな…っ!』



「すみませーん。」

「っ!?」


突然頭の中に割り込んできた声に思わず肩が揺れた。

視界の端で誰かが接客に向かう。


いや、それよりも今は。


同じように先程の声につられたらしく、顔を上げた『常連客』と目が合い、


「すみません、長居しちゃいましたかね。」


俺の視線をどう捉えたのか、そう言いながら苦笑混じりに席を立つ『常連客』。


「あ、いや…」

「そろそろ仕事に回らねぇといけませんし、ここらで失礼しますね。」


何か言わなければと焦る間にも、さっさと済まされてしまう支払い。

条件反射で「ありがとうございました」とようやく口から出た言葉は自分でも分かるほど声が小さく、『常連客』が笑う。



「また来ます、マスター。」



ごちそうさまでした。





目で追う理由

(いや、それはもう分かっているからとにかく今は、)
(この名前も知らない『常連客』を引き留める理由が、欲しい)


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リクエストありがとうございました!



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嘘つき、ロンリー。