秀麗と仙人
※原作終了後、捏造展開。
※子ネタ注意。
白兎は仙人である。
それも彩八仙と共に蒼玄王の時代を生きた、というそこそこ凄い経歴の持ち主だ。
が、残念ながらそのことを知る者はほとんどおらず、仮に知ったとしても誰もそれを信じようとはしなかった。
今世の妻でさえも。
「だって…ねぇ?」
必死の訴えに苦笑ばかり返されてしまい、とうとう力尽きたかのように机に突っ伏す白兎。
その様子に驚いたらしく、一人の幼子が慌ててとたとたと駆け寄っていった。
「だいじょうぶ?どこかいたい?」
「…あぁ…」
「大丈夫よ。あなたの父様は元気なだけが取り柄なんだから。」
「おい。」
「だって仙人様なんですものね。」
「…………」
すぐ傍にやってきた『我が子』を、白兎が無言で抱き上げる。
ついこの間まで抱っこ紐で抱えていた赤ん坊も、いつの間にやらすっかり大きくなったものだ…なんてしみじみ思ったりしたのは、突き刺さる揶揄の視線から逃れるためだった。
しかし、改めて見ても『彼女』の娘だと一発で分かる、愛らしくも利発的な子だ。
よく周囲から「父親に似なくて良かったな」などと言われ、妻の叔父上からは褒められたこともあるほどで。
「とうさま?」
まさか自分がこのような人並みの幸福を享受できるとは、白兎自身思ってもみなかった。
だが、幸せであればあるほど、不意に落とされた影は色濃い。
「…本当なら、お前には主上と結ばれる未来もあったんだよなぁ。」
「もう、まだそんなこと言ってるの?」
「だって、そしたらこの子もお姫様だったのかもしれないんだぞ?」
自分の娘として生まれたばかりに…としんみりしていると、ふと膝の上の幼子が何やらむっとした顔つきで見上げていることに気付き、
「わたしはとうさまのむすめなの!」
「…って、なかなか泣かせる話じゃないか?」
まぁ、全部夢なんだけど。
そう話を締め括り、笑った白兎は少し温くなった白湯に口を付けた。
いくら夢での出来事とはいえ、幼い頃から見守ってきた友人の子をめとるとは、流石に気恥ずかしいものがある。
仙人云々がなくても年の差を考えるべきところだ。
ということで、白兎としてはさっさとそれを笑い話に昇華すべく、誰でもいいからとにかく話したかっただけなのだが。
ふと、その『話し相手』の手に剣が抜かれていることにようやく気が付いて、
「お嬢様を今までそんな目で見ていたんですか…?」
「え?あ、いや、」
「年の差を考えなさい。」
「ちょっ…誤解だっ!!」
「ってところで目が覚めたんだ…」
なんか無駄に疲れた…とぼやいた瞬間、ことりとその手元近くに置かれた湯呑みにつられ、白兎は顔を上げた。
「ありがとう。悪いな、秀麗も仕事で疲れているのに…」
「いいのよ、これくらい。」
微笑み返した秀麗は背後へと回り、白兎の肩に手を乗せて解すようにゆっくりと揉み始める。
そして白兎が湯呑みに口付けたところを見計らい、その耳元に顔を寄せた。
「でも私と結婚したことは夢じゃないんだからね、旦那様?」
夢オチ、という夢を見た。
(…そのすぐ後よ、あなたを授かったのは。予知というか何というか…ふふっ、あなたの父様は本当に仙人様だったみたいね。)
(そう何度目かになる母の惚気話にふとどこからくしゃみが重なって聞こえ、私達は思わず顔を見合わせて笑ってしまうのだった)
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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。