海燕と後輩
※破面篇。
護廷十三隊十三番隊副隊長を務める志波海燕は生来、面倒見のいい男だった。
お節介、と言うべきかもしれない。
そのため大抵の相手とはすぐに親しくなり、そうでなくても余程相性が悪くない限りは、時間さえ掛ければある程度打ち解けることができた。
なのでまぁ、白兎という死神とは余程相性が悪かった、ということだろう。
『いや、そんなことはないだろう。』
そう海燕自身も納得しかけていた矢先、それをきっぱりと否定したのは自隊の隊長。
己の上司にやや天然なところがあることをよく知っていた海燕は「いや、そんなことがあるんすよ」と思わず苦笑したが。
『だって君達、長い付き合いになるんだろう?確か白兎は君が死神になって初めてできた後輩だって、それでよく可愛がっているじゃないか。』
『俺の方はまぁ、そうなんですけどねぇ…』
不思議そうに首を傾げる浮竹に対し、海燕は誤魔化すように自身の前に用意されていたお茶を飲み干した。
浮竹の言う通り、白兎は海燕にとって初めての後輩で今も同じ十三番隊所属。
そのために他の誰よりも構っている、いや構い過ぎているくらいだと海燕自身少なからず自覚していた。
対する白兎は愛想笑いを浮かべはするものの、いつまでも他人行儀で、どことなく一線引いているような、
『もしかして、だからあんなことを言ったのか?』
『あんなこと?』
『先日、他隊に欠員が出て白兎がその応援に行っていたことがあっただろう?その時、異動の話をしたそうじゃないか。』
『あー…いや、アレは』
『戻ってきてすぐ、白兎が俺のところに来たんだ。異動の話、断ることは出来ないかって。』
『え?』
このまま自分の下ではやりづらいんじゃないか。
そう思って、確かに白兎の反応を見るつもりで冗談めかして口にした。
だが、その時も白兎はいつものように曖昧に笑っていた、はずだった。
『もう少し「先輩」の下に居たいって言っていたぞ?』
『…………』
『あんなに懐いているのに、君は酷い「先輩」だなぁ。』
向けられる柔らかな眼差しから逃れるように目を逸らしながら、海燕は空になった湯呑みで飲む振りをして弛みそうになる口元を隠した。
思いがけない白兎の言葉に正直、悪い気はしなかった。
だから―…
「会議、お疲れ様でした。」
己の前に恭しく跪き、頭を垂れるその姿を見下ろして「おう」と返しながら、ふと思い立ってその髪をぐしゃぐしゃと掻き撫でてやった。
「ちょ、止めてくださいよ。」
困ったように制止の声を上げながらも、力尽くでそれを振り払おうとはしない白兎に、ついつい口角が上がる。
そして、その輪郭をなぞるようにゆっくりと指先を下へ下へ、頬を這わせ、軽く顎を引き上げようとした瞬間。
「止めろ。」
低く冷たい声と共に白兎は海燕の―…いや、「海燕の形をしたもの」の手を払い落とした。
「余計なことをするな。」
「何だよ?これがお前の望みだろうが?それを叶えてやって何が悪い?」
「誰もそんなことは望んでない。」
お前らはただ『先輩』のままでいればいいんだ。
そう吐き捨てるように立ち上がった白兎が身に纏うのは黒い死覇装とは真逆の、真っ白な衣装。
その姿に「海燕の顔」を歪め、アーロニーロ・アルルエリはどちらともなく嗤ったのだった。
強欲と無欲
(私には貴方が必要なのです)
(貴方には私は必要ないのです)
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呪術祭(改)より。
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嘘つき、ロンリー。