乙骨と『特別な子』
※乙骨√。
「戻ってきて早々悪いんだけどさ、もう一件頼まれてくれる?」
「はぁ、別にいいですけど…」
「ありがと!いやぁ、本当悪いね。予定では棘に回すはずだったんだけどさ、まだ帰ってきてないんだよねー。」
「え…棘くん、何かあったんですか?」
「大丈夫大丈夫。なんかどっかで何かのイベントがあってるらしくて、帰りの車がその渋滞にハマっただけだから。」
「そう、なんですか?」
「そうそう。だから憂太も安心して代打の方ヨロシク!」
そう最後まで軽いノリで見送られた憂太は「まぁ、いつものことだし」と苦笑して済ませていたものの、別れ際の五条の一言だけは現場に向かう間中もずっと引っ掛かって仕方なかった。
(「くれぐれも仲良くね!」って……?)
任務の詳細について説明してくれた補助監督官の話によると、相手は呪詛師と思われる、憂太と同い年の少年らしいが。
(まさか言葉の通りってことはないだろうし、やっぱり皮肉、なのかなぁ…?)
今のところ大した被害は出ていないが、厄介な相手だと聞いた。
よく悪役が口にする「可愛がってやれ」的な、そういう意味だろうか。
『最強』の考えることはよく解らない、とやや自身のことを棚上げしながらも、ようやく目的の人物と対峙した瞬間。
「……もう放っておいてくれ…」
憂太は既視感のようなものを覚えた。
何となく誰かに似ている、ような気がした。
とこなつべくと
「……行くよ、里香ちゃん。」
異形の化け物をその身に纏わり付かせた相手は、静かにそう言い放つと手にした刀を引き抜いた。
それに対して俺が動かなかったのは―…動けなかったのは、決してその鈍い光を放つ兇器に怯んだからではない。
正反対の、黒と白。
だというのに、まるで鏡に映したような錯覚。
もう一人の、自分。
『……トク、ベツ…』
ふとその瞬間、耳元で囁かれる声に我に帰った。
『トクベツ、トクベツ、オマエハ、トクベツ…』
そうだ、俺は特別だ。
選ばれた存在だ。
他のとは違う、だから。
だから。
(―……だから?)
『オマエハ、ヒトリ』
厭らしく嗤うその口元は彼の刃よりも鋭く。
だがその痛みが脳に到達するより先に眼前まで迫った真っ白な化け物が、一拍遅れで吹き抜けた風が、外界を遮断していたフードを吹き飛ばした。
(ぐらりと体勢を崩し、倒れ込む一瞬)
(「ごめん、」と泣きそうに顔を歪めたのは誰だ?)
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呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。