甚爾と五条の異母兄


「五条に生まれた六眼の子供、見てみたくありませんか?」


家人の目を盗んでは外へと繰り出し、悪さを積み重ねていた頃、つるんでいた仲間…というより共犯者の一人からそんな誘いを受けた。


その姿を盗み見るのにちょうどいい日時や場所を知っている、と薄ら笑いを浮かべながら言葉を続けた相手について、甚爾が知っているのは白兎という名前だけ。

素性はよく知らず、そもそも興味もなかったが、何となく御三家に連なるどこぞの家のはぐれ者だろうと見当は付いていた。


そして、今回の誘いから察するに、



「どうします?」

「あー…まぁ、暇潰しにはちょうどいいだろ。」



白兎の正体が判ったところでどうでもいい。

誘いに乗ったのはただの気紛れだった。







―…のだが。






背後に立った呪力のない甚爾を気取り、振り返った『六眼の子供』。

元々見るだけのつもりだったとはいえ、思わず動くことを忘れて立ち尽くしてしまった甚爾は、何故かその小さな手が振られるのを見てようやく我に帰った。


そして、従者に促されて何事もなかったかのように歩き出した後ろ姿を見送り、そっと息を吐き出す。


(……何だ、今の…)


まさか気取られるとは思わなかった、という驚きは勿論あった。

それと、困惑がもう一つ。


(あのツラ、どこかで…?)


不意にすぐ近くから聞こえてきた舌打ち。

振り向けばそれまで姿を隠していた白兎がいつの間にか傍らに立ち、普段は薄ら笑いを浮かべるそれを珍しく歪ませていた。


その様子を一目見た瞬間、腑に落ちた。


「あぁ、なるほど…」

「…何か?」

「いや?ただ『五条の長男は病死した』って話を思い出しただけだ。」

「……どういう噂を耳にされたかは知りませんが、先程の六眼の子供が嫡男ですよ。」

「へぇ?」

「………まぁ、確かに。上に一人、妾腹がいたそうですが。」


五条家の関係者だとは思っていた。


色味さえ考慮しなければ、恐らくあの子供は数年後、今目の前にいる男のように成長するのだろう。


「で、目的は何だ?」


笑いを噛み殺してそう問えば、二度目の舌打ち。

だが、今度はすぐに気持ちを切り替えたのか、それとも開き直っただけか、白兎はいつものように笑ってみせた。


「先程のアレ、殺せます?」





故意に堕ちる

(そして初めて、白兎という男に興味を持った)


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呪術祭(改)より。
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嘘つき、ロンリー。