甚爾と同業者
※夢主設定についての注意事項が二つ。
※妻子持ちです。そしてクズです。
※不快に思われた方はどうか早めに引き返してくださいますように。
「おぉ、マジか!良かったじゃん!おめでとう!」
思わず口からこぼれ落ちた祝福の言葉に、ゆるゆると顔を上げた伏黒くんは「信じられない」といった様子で目を見開いていた。
まぁ、正直信じられない気持ちなのは俺自身も同じ。
これまで皮肉交じりに同じ言葉を吐き捨てたことは何度もあるが、心の底から純粋な気持ちを込めて発したのは多分今回が初めてだろう。
俺にもまだ人間の心らしいものが残っていたんだなぁ…と他人事のように感心してしまった。
伏黒くんとの付き合いは、彼が禪院姓だった頃まで遡る。
当時の仕事の相方が死んでしまい、だが次の依頼がしっかり詰まっていた俺は仲介屋から元相方と同じ近接タイプの呪詛師を紹介してもらうことに。
『ぜんいんとうじ…あぁ、アレか。禪院家のできそこな』
日頃から式神を使っていて本当良かったと思った。
でなければ、俺は初対面の時点で頭部を吹き飛ばされて死んでいた。
その後もキレやすい禪院くん(現伏黒くん)はいまいちキレどころが分かりにくく、俺(の式神)が殺された回数は彼が結婚するまでに軽く三桁近くはいっていたはずだ。
が、その「結婚」が思わぬ転機となった。
『結婚すんの?マジで?うっわ、ははっ!良かったじゃん!おめでとう!』
結婚報告、というよりもただ「禪院」と呼ばれ続けるのが嫌で仕方なくそれを話しただけ。
そしたら案の定、けらけらと笑いながら副音声で「ご愁傷様」と聞こえてきたため、いつも通りその頭をぶっ飛ばしてやろうと思ったのだが。
『じゃあ、これからは同じ地獄の住人ってわけか。仲良くやろうぜ!』
『あ…?』
結婚を地獄と称した白兎が既婚者だとその時初めて知り、思わず拍子抜けしてしまった。
孔曰く、「五本の指に入るクズ」。
なんて紹介を受けずとも、そもそも「野郎で呪詛師」という時点で仕事以外関わる気はさらさらなかった。
その仕事でも組む度に(どれも式神で本体ではなかったが)何度も殺している。
そんな白兎の配偶者など一体どんな相手なのか全く想像が付かず、その上、子供までいると聞いてしまって、
『えぇ?俺の嫁?いやぁ、これがもうウザいのなんのって!』
『あはは、本当それなぁ。何で結婚したんだか俺も分かんねぇわ。』
『だからさぁ、俺にとって人間ってのは大きく分けて「アイツ」と「それ以外」になんのよ。』
『いやいやいや、そんなんじゃなくって。何て言うの?アイツ以外どうでもいいって言うか?』
『伏黒くんは?どうよ?』
少しずつ殺す回数は減り、少しずつ会話が増えていった。
だからつい、妻が死んだ、こともぼそりとこぼしてしまい―…
「おぉ、マジか!良かったじゃん!おめでとう!」
「………あ?」
俺にとって、人間は『妻』と『それ以外』に分類される。
と話すと、何故か毎度とんでもない愛妻家と茶化されるので少し言い換えてみる。
俺にとって、世界は『嫌いなもの』と『どうでもいいもの』に分類される。
そして、その『嫌いなもの』の筆頭が『妻』だ、というただそれだけの話。
結婚するまでは別にどうでもよかったものの、結婚してからがもう本当面倒臭い存在になった。
ああ言えばこう、こう言えばああ、といちいち言い返してくる『妻』にいっそ力尽くで黙らせてやろうかと何度思ったものか。
そうしなかったのは、というより出来なかったのは、相手もそこそこ実力のある術師だったせいだ。
そして、ぐだぐだとしている間にまさかの子供が産まれ、関係はますます悪化してしまった。
だから心の底から伏黒くんが羨ましかった。
「アイツも早く●んでくんねぇかなぁ…あ、そうだ!伏黒くんならアイツより断然強いっしょ?●ってくんね?」
「……金払えよ?」
「そこはぜひ、トモダチ割引でよろしく!」
「ガキはどうする?一人いたろ?」
「あー…アレは別にどうでもいいわ。好きにし」
「最近、あのクズと連絡取れねぇんだが…オマエ、何か知ってる?」
「さぁな。」
しとでなひのひ
(なんかもう、どうでもいい)
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呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。