乙骨と同級生
※最終話辺りの話。
宿儺との最終決戦から数日。
体力呪力共にすっかり回復し、いつでも任務に向かえるように準備万端の憂太だったが、残念ながら未だ高専待機の状態が続いている。
「まだ、許したわけじゃねぇからな…?」
教室の真ん中にポツンと置かれた一組の机と椅子。
そこに一人項垂れるように座る憂太と、真正面から見下ろすように仁王立ちする真希。
教室の入り口付近ではパンダと棘がニヤニヤと笑いながら二人の様子を見守っている。
これってイジメじゃない…?と憂太は思ったものの、流石にこの状況下でそれを口にする勇気はなかった。
「えっと、お待たせ…?」
そんな不穏な空気が漂う中、パンダと棘の背後から恐る恐る顔を覗かせた白兎。
二人に道を譲られ、更に慎重な足取りで進み出た姿がその両腕に抱えていたのは。
「一応言われた通り、事務室で原稿用紙と鉛筆あるだけもらってきたけど…?」
「おう、ここに置いてくれ。」
真希の指示により、ドサドサッと重い音を立てながら白兎が目の前に積み上げていくそれらに憂太の顔は青ざめていく。
「この反省文を書き終えるまで任務には行かせないからな。」
「え、ま、まさか、これ全部…?」
「あ?」
「真希、お楽しみのところ悪いが、そろそろ時間だぞー。」
「今行く。いいな、憂太?四の五の言わず書け。それで白兎はしっかり見張っとけよ。」
「あ、うん。」
「じゃあ真希と棘は任務で、俺は一年の方に顔を出してくるから。」
「しゃけ。」
「いってらっしゃい、気を付けて。」
「…いって、らっしゃい…」
ばたばたと教室を去って行く三人を見送り、そっと一息吐いた憂太は同じく留守番組となった同級生をちらりと盗み見た。
白兎なら、もしかしたら味方になってくれるかもしれない…
なんて期待を込めた視線に気付いたのか、振り返った白兎は困ったように苦笑してみせた。
大変だけど、みんなに心配掛けたからまぁ仕方ないよね。
そんな心の声が聞こえた気がして、憂太は静かに諦めるしかなかった。
「えっと、付き合わせちゃってごめん…」
「こっちこそ、真希ちゃんじゃなくてごめんね。」
(あれ……?)
『えっと、今日の任務は白兎君と二人なんだ?』
『あ、うん。…真希ちゃんじゃなくて、ごめんね。』
『え?』
これまでにも何度か掛けられてきた、同じ言葉。
パンダ達も似たようなことを、揶揄を滲ませて投げ掛けてくることがあったが、白兎の場合はいつも心底恐縮そうにしていて―…
(…でも今のは、何か違う感じ、だったような……?)
「憂太くん?」
どうかした?と不思議そうに首を傾げる白兎につられるように、憂太も首を傾げてしまった。
鈍愛
しばらくは何とか頑張って文字を書き連ねていった憂太だったが、真っ新な原稿用紙を前にしてついに頭を抱えて固まってしまった。
その様子を見て、憂太に気付かれないように白兎が小さく笑う。
(真希ちゃんも素直じゃないなぁ…)
だからこそパンダ達は余計にやきもきして、あれこれとお節介を焼いてしまうのだろう。
そんな二人に倣い、これからは自分も応援していかなければ、と白兎は改めて密かに心に誓った。
勿論、友達として。
(……呪いに変わってしまう前に手放すことが出来て、本当に良かった。)
そうして静かに終わった、恋の話。
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呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。