柔造と幼馴染
※柔蝮要素が少しあります。
ほぅ…と誰かがこぼした溜息に、珍しく空気を読んだ俺は「馬子にも衣装やんな」と喉まで出かかった憎まれ口を飲み込んだ。
いや、もしかしたら、それをこぼしたのは俺自身だったのかもしれない。
目の前をゆっくりと通り過ぎていく純白の花嫁姿の、その横顔の何と幸せそうなことか。
(あぁ…思った通り、綺麗やなぁ……)
いつかはこうなることは解りきっていた。
そして、その「いつか」がついにやって来た。
ただそれだけのこと。
だから花嫁の肩越しに花婿と目が合っても、俺は自然と笑うことが出来た。
「おめでとさん。」
すると相手は一瞬驚いたように目を見開き、だが次の瞬間には「おう、」と幸せそうに―…
…幸せそうに眠る、柔造の間抜け面をぼんやりと見下ろすことしばらく。
と、すぐさま我に帰り、その頭に拳骨を落としてやれば、その衝撃で唸りながら柔造が起きた。
「いっ、たぁ…何すんねや、白兎…」
「そらこっちのセリフやぞボケ…身重の花嫁放って何さらしてんねや…?」
いくら男友達と雑魚寝とはいえ、婚儀を済ませた夜を別の人間と過ごす、というのは問題あるだろう。
他人事ながらこれからの結婚生活が思いやられ、蝮に同情していると「はなよめ?何のことや?」と首を傾げる柔造。
その?気な姿にもう一発、と拳を振り上げようとして、ふと周囲の景色に気付いた。
見慣れた自分の部屋、だが昨夜は虎屋に泊まらせてもらったはず。
そう無意識に口に出していたのか、柔造に苦笑されてしまった。
「なんや白兎、寝ぼけとんのか?」
「……あ?」
「昨日は任務帰りに寄らせてもろて、そのまま一緒に呑んだんやないか。」
「…………」
「やっぱりお前、まだ寝ぼけとるわ。」
言われてみれば確かに、薄ぼんやりとそんな記憶が蘇ってくる。
だが、夢を見ていたのだとしたら一体どこからどこまでが夢だったのか?
『せやから俺、蝮もらいますわ!』
米神に手を添え、眉を顰めた。
「……めっちゃ気持ち悪いわぁ…」
「お?白兎が二日酔いなんて、珍しいこともあんねんなぁ…水持ってこよか?」
「いや、えぇ。ちょお蝮んとこ行って、プロポーズしてくる。」
「………は?」
何が気持ち悪いかと言えば、二人の婚姻をあっさりと受け入れていた己の殊勝さがらしくもなく一番気持ち悪い。
それにもし仮にアレが現実に起こったとしても、恐らく同じ結末を辿るだろうと想像が付くのも苛立たしかった。
他の女相手なら、いくらでもいちゃもんが付けられる。
いや、逆に付き合いの長さなどマウントを取って優越感に浸ることも出来たかもしれない。
だが、相手が蝮では、
「あんなもん、納得するほかないやろがっ!!」
「ちょ、何のことや!?」
「あかん!絶対あかん!せやからいっそ蝮は俺がもらう!やから柔造、お前は別の嫁もらえ!えぇな!?」
「はぁ!?訳分からんぞ、お前!?」
そうと決まれば早速宝生家に向かわなければ。
と支度を始めようとすれば慌てた様子で俺を止めようとする柔造。
その後しばらく攻防を続けながらも何とか蝮の下に辿り着いた俺達は、絶対零度の眼差しに出迎えられるのだった。
幼馴染みから一言
(痴話喧嘩に巻き込むなや、申どもめ。)
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呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。