日番谷と昔馴染


「お帰り、シロちゃん!」


戸を開けるなり、襲い掛かる大音量。

吹き飛ばされるかと思った…というのは流石に大袈裟だが、とりあえず鼓膜は破れるかと思った。


なんて眉間に皺を寄せながら耳を掻く日番谷に、更なる追撃が。


「ご飯にする?お風呂にする?それとも俺にしちゃったりする!?」

「…………」


何かかなり不快なことを言われた気がするが、まだ耳が上手く機能していなかったせいかそれほど腹は立たない。

代わりに大きく息を吐き出すと、無駄に盛大に出迎えてくれた、その昔馴染みの男を睨み上げた。


昔馴染み、とはいえ、ここは日番谷が自室として与えられている部屋のはずだ。


「不法侵入だぞ、お前。」

「違いますぅ、ちゃんと許可もらってますぅ。」

「あ?許可?誰から」

「浮竹隊長から?」

「何でだよ。」

「じゃあ、乱菊さんから!」

「もっと違うだろ。」


いや、あの二人ならやりかねないか…なんてふと頭の片隅に思い浮かびはしたものの、日番谷はあえてそれを黙殺した。

仮にどちらかが許可したとしても、あの二人にそんな権限はないだろう。

そもそも「じゃあ、」と言い直している時点でどちらも嘘に違いないが。


そう日番谷が見抜いていることを察したのか、先回りして「とにかく!ここにいる許可はちゃんとあるからな」と強引に押し進めようとする白兎に呆れてしまった。


「それで白兎、何の用だよ?」

「白兎じゃない!白兎兄ちゃんだ!」

「…………あ?」

「つまり、俺に隠し事は無用ってわけよ!ということで、何か悩みがあるならお兄ちゃんに話してごらんなさい?」

「一体何の話をして、」




『あのね、日番谷くん。白兎お兄ちゃんのことなんだけど…』

『何遍も言ってんだろ、日番谷くんじゃなくて日番谷隊長だ。あとその「お兄ちゃん」もそろそろ止めとけ。』

『あ、そうだよね…ごめん。』

『…それで、白兎がどうしたんだよ?』





(………あぁ、なるほど……)


本当に無駄に察しが良いらしい。

もう一度、大きく息を吐き出した。


「冬獅郎?」

「……飯にしてくれ。」

「お?」

「ハラ減った。」

「おぉ、そうだよな!先に飯にしよう!すぐ準備するから大人しく待ってろよー?」

「あぁ。」


どこか嬉しげに部屋の中へと戻っていく白兎の後に日番谷が続く。


もうすぐ席次が上がるのだ、という話を聞いた。

だから久々に三人集まって、この少しお節介なところのある兄貴分のお祝いをしよう、と。


そうもう一人の昔馴染みから相談を受けていることは、もうしばらく黙っていることにした。





吹く風は冷たく、どこか温かい


(君は強い、と知っている)
(強くなったのだと知っている)

(それでも私はさいごのその瞬間まで、)
(きっとこの手を差し出し続けるのだろう)


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呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。