正守と同業者


※原作終了後。










『―…墨村様、この度は幹部就任おめでとうございます。』


化け物の巣窟と見紛う、裏会最高幹部会「十二人会」。

初参加を終え、一人その場に居残った正守に声を掛けてきたのは、どこか涼やかな声をした男だった。


『お初にお目に掛かります。会合中、周辺の警備を任されております、白兎と申します。どうぞ以後お見知りおきを。』


年若く、恐らくは正守とそう変わらぬ年齢。

恭しく座礼する姿は至極真っ当な人間のそれに見えるが、場所が場所なだけに余計異様に感じられた。


化け物の中に常人一人、などあり得ない。


決して油断してはならない。



そう自身に言い聞かせながら、だが正守は―…





『……あの、』

『はい?』





『……涎、付いてますよ。』

『ぅおっ!?』

『…あと寝癖も…』

『やっべ…!サボってたのが一発でバレる…!』

『…………』









「白兎ねぇ…あの怠け癖さえなけりゃあ幹部にって話は以前からなくもなかったんだけどォ。」


私がいくらシメてあげても治らなかったんだからホント筋金入りよねぇ?

そう言って笑う竜姫の目は全く笑っておらず、正守はから笑いを返しながらそっと視線を逸らした。


初対面から毒気を抜かれ、その後も「警戒するのも馬鹿馬鹿しい」と思いながらも白兎に対して警戒し続けた自分はやはり馬鹿だったのだ、と改めてそう思った。


「あぁ、そう言えば白兎って今、墨村君のとこにいるんだっけ?どう?調子の方は?」

「…怪我の方は大分良くなったみたいで、割と元気にやってますよ。なんか居心地が良いのか、すっかりうちに居着いちゃってますが…」

「あらら。ま、今のところ差し迫った問題も特にないし、もうしばらくはそのまま面倒見てあげてよ。」

「…いいんですか?」


元幹部達に対する扱いをこれまで見てきた正守は、てっきり「首に縄巻いてでも引っ張ってこい」とでも命令されると覚悟していただけに、思わず拍子抜けしてしまった。

その様子に気付いたのか、竜姫は今度こそ目を細めて笑う。


「墨村君だって『白兎の復帰は少し待ってくれ』って頼みに来たんじゃないのォ?」

「…………」

「フフッ、若手同士仲良くやってるようで何より。安心したわァ。勿論、怪我が完治したら新生裏会のため、ひいてはぬらちゃんのためにバリバリ働いてもらうから覚悟しときなさい?」

「…そう本人に伝えておきます。」

「よろしくねぇん。」


やや釈然としないながらも頭を下げた正守に、竜姫は笑いながらヒラヒラと手を振ってみせた。





怠け者と夜

(頭領、どうでしたか?)
(…お前、頭領って呼ぶなって言っただろ。)
(いや、だって俺ももう立派な夜行の一員だし。)
(それも認めてないから。)
(えー…そりゃないっすよ、頭領ー。)
(だから頭領は止めろって)

(墨村君も絆されたみたいだけど、白兎だって怪我を負うほど本気になるなんて誰が想像したかしらねぇ?)
(相性いいんじゃない?あのフレッシュコンビ。)


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呪術祭(改)より。
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嘘つき、ロンリー。