良守と幼馴染
※墨村家、雪村家に並ぶ結界師の家系。
※設定捏造注意。
四百年にも亘り、今なお間流結界術の正当な継承者の座を巡って争う墨村家と雪村家。
その争いから早々に離脱した俺の先祖は以来、両家の間で中立の立場を取っている。
…というのはまぁ、表向きの話。
実際には、その時々であっちに味方したりこっちにフォロー入れたりと、傍から見れば日和見主義のコウモリ家系もいいところだろう。
もしかしなくても両家の争いになかなか決着が付かない一因なのでは…?と考えているのは多分俺だけではないはず。
…なんて言っている俺もまた、やっぱり中立ではいられなかったわけだけど。
『何?あんた、また白兎に助けてもらったの?』
『うるせぇ!』
『どうでもいいけど、お礼はちゃんと言った?』
『……サンキュ、白兎。』
『いや、俺が勝手にやったことだし…』
良守は時音ちゃんより年下だから。
結界師としての力量がまだまだだから。
言い訳は色々あるものの、俺が良守を手助けする一番の理由は単純に「友達だから」だろう。
流石に女の子相手に二対一になるのは少々気が引けて、一度時音ちゃんに謝ったこともあるが「ちょうどいいハンデよ」と笑われただけだった。
『あんた達って二人揃ってようやく一人前だもんね。』
その言葉に一瞬、俺は何故か無性に嬉しくなり、反射的に隣に目を向ければ良守の顔は少し歪んでいて―…
「―…あ、良守来たっぽい。」
俺の呟きに前を歩いていた時音ちゃんが振り返ると、「あいつ、結局また遅刻じゃない」と溜息を吐いた。
「じゃあ俺、校門のところで待機してるから。」
「分かった、また後でね。」
「いい子で待ってるんだぜ、ボーイ。」
そう時音ちゃんと白尾の後ろ姿を見送って、宣言通り校門へと足を向ける。
そして大して歩かない内に鉢合わせた良守達はよほど急いで来たのか、少し息を切らせたその姿に俺も呆れてしまい、時音ちゃんに倣ってそっと息を吐いた。
「お前なぁ…その遅刻癖、いい加減何とかしろよ。」
「本当だよ、全く。白兎を見習ってもらいたいもんだねぇ。」
「仕方ねぇだろ?寝坊しちまったんだから…」
「時間にルーズな男はモテないぞ、っていうか時音ちゃんに嫌われるかもなぁ?」
「なっ…!?」
少し脅してやればあっさり固まってしまった良守に、斑尾が鼻で笑う。
俺も苦笑しながら「ちゃんと時音ちゃんに謝っとけよ」とひらひら手を振って、先程と同じように一人と一匹を見送ろうとした。
が。
「…良守?どうした?」
「何やってんだい?ほら、さっさと行くよ?」
なかなかこの場を動こうとしない良守に、俺と斑尾は思わず顔を見合わせた。
「なぁ、白兎…」
「うん?」
「どうせさ、これから校門のところでマンガ読むだけだろ?なら俺達と一緒に来いよ。」
「え?」
「前はそうしてたじゃん。」
前、というのは小学生の頃のことだろう。
だがあの頃はともかく中学生となった今では、良守もわざわざ俺が手を貸す必要ないくらいに成長しているし、貸せば良守のじいちゃんにバレた時に「修業にならんだろうが!」と叱られてしまう。
そして時音ちゃんのばあちゃんには「あらあら、墨村の後継者とやらはまだまだ子守が必要のようですわねぇ?」と笑われるのがオチだ。
なので今の俺の役割はあくまで二人の補助、万が一何か起きた場合の手伝いや外部との連絡役など(良守のじいちゃんによって)しっかりと決められている。
そうこれまでに何度も繰り返してきた説明を再度口にしたものの、まだ納得がいかないのか仏頂面でそっぽを向く良守。
「…時音とは一緒にいただろ…」
「そりゃお前の代役でな、お前がなかなか来ないから。」
「ぐっ…!」
「ほら、その時音ちゃんが待ってるからさっさと行けって。」
苦笑混じりにその背中を押せば、渋々歩き出した良守は相変わらず「時音ちゃん」の名前に弱いらしい。
更に斑尾に急かされて、その足取りはますます速まっていく。
「終わるまでちゃんと待ってろよ!帰りは一緒に帰るからな!」
「おう、お勤め頑張ってこいよー。」
途中方向転換したのはきっと斑尾の鼻が何かを嗅ぎ当てたのだろう、良守達はあっという間に視界から消えてしまった。
最後まで見届け、やや弛んでいた両頬に気付いた俺はそれを軽く叩いて引き締める。
「……おし。」
いつものように持参した少女漫画でも読んで、いつでも良守の(恋の)援護射撃が出来るようにしておくか。
友達なので。
(…なんか白兎って、昼の学校じゃ普通なのに夜になるとよそよそしいんだよなぁ…)
(何だい、それは?いいからあんたはこっちに集中しな!)
---------------
呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!
戻る
嘘つき、ロンリー。