一心と一護の幼馴染


幼い頃、息子の一護はひどく泣き虫だった。


周囲に揶揄われる目立つ髪色に、優しすぎる性分。

そして、見えないはずのものが見えてしまう、その力。


親として全く心配はなかったと言えば嘘になるが、それでもある程度黙って見守ることが出来たのは、それら総てを笑い飛ばしてくれる幼馴染みがいつもその傍らにいたからだ。
(もう一人、物理的に殴り飛ばしてくれそうな子もいたが)


『じゃあおれも、いちごにヒミツを教えるよ。』


また誰かの心ない言葉に俯いていた一護が、「ヒミツ」という音に心惹かれて顔を上げた。

残念ながらその耳元に口を寄せた幼馴染みの声まではこちらに届かなかったが、そんな二人の後ろ姿を微笑ましく眺めていると、不意に何故だか遠い遠い昔に置いてきた親友のことを思い出してしまった。


―…なぁ、  。


いつかこの二人もまた、あの頃の自分達のようになるのだろうか。

なんて少々感傷に浸りかけた瞬間、内緒話が終わったのか、すっかり泣き止んだ一護は不思議そうに首を傾げながら幼馴染みに向けてぽつりと聞き返した。










「……ぜんせ?」


そう不思議そうに聞き返した発音はやや怪しかったものの、すぐにその言葉に思い至ったようで、白兎は少し考え込み始めた。


「あー確か、タヌキだって誰か言われたような気が…って、あれは動物占いだったっけ?すんません、前世占いは多分やったことないっすね。」

「いや、占いとかじゃなくて…ほら、覚えてねぇか?むかぁし、一護と話してただろ?」

「一護と?」

「秘密のお話ってやつ?」

「いやぁ…?ちょっと思い出せないんすけど…っていうか、秘密なら覚えてても言いませんって。」

「何をぅ!?一護には話せて俺には話せないってか!?」

「うわ、一心さん大人げない!」


突然飛び掛かってきた一心に動じることなく、からからと笑いながらそれを避ける白兎。

そこに更なる追撃を加えようとしたところで、タイミングが良いのか悪いのか、自室から降りてきた一護が二人の間に。


「悪い、白兎。待たせ、うぉっ!?」

「グハッ!?」


反射的に振るった拳が一心の顔面に決まる。


「おぉ、クリティカルヒット。」

「何やってんだよ?危ねぇなぁ…」

「うぅ…っ…息子達が、冷たい…ガクッ。」

「はぁ?」


呆れたように眉を顰めた一護は気を取り直して白兎の腕を掴むと、倒れ伏せたままの父親を見下ろした。


「ちょっと白兎と出掛けてくる。夕飯までには帰ってくっから。」

「じゃ、お邪魔しましたー。」


そして返事も待たずに出て行ってしまった二人の後ろ姿を見送ると、そっと溜息を吐きながら一心はゆっくりと体を起こした。


答えをはぐらかされたのか、それとも本当に覚えていないのか。


(…まぁ、かれこれもう十年以上前のことだしな…)



『お前との腐れ縁、死んでも続きそうで嫌だわー。』

『何だとぅ!?』



一心の脳裏を過るそれは、かれこれもう百年以上前の記憶だった。





片影の隠し事

(二人の姿はまるであの頃の自分達のようで、)
(その姿はあいつにそっくりで、)

(…って、俺は一体何を期待したんだ?)


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呪術祭(改)より。
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嘘つき、ロンリー。