牛島と同級生01
「お早う、白兎。」
掛けられた声に一瞬、返事に詰まってしまった。
たった今ランニングを終えたばかりで呼吸を整えていたせい、というのも勿論あるが、問題はその声を掛けてきた相手だ。
「………おす…」
辛うじて何とかそう返したものの、思わず目を逸らしてしまう。
が、こちらに突き刺さる視線はいくら待ってみたところで逸らされる様子がない。
「…そっちも、朝練終わりか?」
「あぁ。」
「……こっちも、あー、今終わって、……着替えるところだわ。じゃあ、また教室でな。」
返事を待たず、逃げるように目の前の部室に入れば、先に着替えを始めていた部員達の視線が集まる。
その内の一人と目がかち合うと、そいつは何かを察したように苦笑した。
「お前も大変だな、白兎。」
他の部員達が立ち去った後もしばらく、部室で俺は一人、時間を潰して待っていた。
そして始業チャイムに間に合う頃合いを見計らって外へ出ると、思った通りと言うべきか、そこにはまだ牛島が立っていた。
俺より前に出て行った連中の、好奇の目に散々晒され続けていただろうに、そんなことを微塵も感じさせないほど毅然とした姿に無意識に溜め息がこぼれる。
「どうした?」
「…いや、別に。早く教室行こうぜ、遅刻しちまう。」
不本意とはいえ、待たせた張本人の言うことじゃないな、と我ながら思ったが、牛島は特に何も言わない。
ただ俺が一歩足を踏み出せば、それに続いて歩き出した。
そして、すぐに隣に並ぶ。
「…なぁ、牛島。」
「何だ?」
「俺、丁重にお断りしたはずなんだけど。」
まさか、あれは牛島の中で『なかったこと』にされているのだろうか。
なんて心配したものの、牛島から返ってきたのは「解っている」と肯定の言葉。
それに安堵する反面、だったら余計に今現在のこの状況はおかしい気が、
「だが、だからと言って俺が心変わりする必要はないだろう。」
まるで俺の心境を見透かしたかのような牛島の言葉に、つい足が止まった。
すぐにそれに気が付いた牛島もまた、一、二歩先に進んだところで足を止め、こちらを振り返る。
そして、いつもと同じように真っ直ぐに俺を見つめた。
「好きだ、白兎。」
何回言えば気が済むんだ
(最初は教室の真ん中で、)
(次は体育館近くの水飲み場で、)
(それから、)
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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。