初と主治医01
※トーナメント前の話。
『悪魔の鍵』を手に、斉藤初は改めて己が目的を見定める。
打倒グングニルは勿論のこと、自身の力の証明に年下に抱いてしまった畏れの払拭。
そして何より、父の汚名を―…
「わざわざ自分から厄介事に首突っ込むなんて、本当物好きですねぇ?」
…いや、まずは人のベッドに悠々と横たわりながら嫌な笑みを浮かべる、目の前の男をどうにかすべきだろう。
ついでに今、男が読んでいる『人の飼い方』なる本の著者にもいずれ制裁を加えてやろうと、初はそう心に決めた。
決して八つ当たりなどではない、今後降りかかるであろう被害を思えば自分にはその正当な権利があるはずだ。
「…口の利き方に気を付けろ、白兎。」
「あぁ、これは失礼いたしました、坊ちゃん。」
「止めろ。」
「申し訳ありません、お坊ちゃま?」
わざわざベッドから降りて仰々しくお辞儀してみせた白兎に、舌打ちする初。
すると「お行儀が悪いですよ」と注意が入り、初はますます不愉快になった。
「まぁ、冗談はさておき。これでも一応、その身を案じているのですよ、一応。」
「心配?お前がか?」
「勿論。貴方の主治医ですから、一応。」
やけに繰り返される「一応」が気になるものの、そこはさておいて。
白兎が初に仕えるようになって十数年余り。
主人を主人とも思わぬ狐狸のような男だが、流石にアクマゲームなる奇怪な存在を前にして人間らしい一面を覗かせたのだろう。
「貴方にもしものことがあれば、次の職を見付けないと。」
「おい。」
それは本当に、恐ろしいほどに人間らしい一面だった。
今度は「冗談だ」と付け加えられることもなく、白兎はただ肩を竦めて笑うだけ。
二度目の舌打ちにも、何も言わない。
トーナメントも近いことだ。
これ以上ここに居ても考えはまとまらないと判断し、初は白兎に背を向ける。
その視界の端では白兎が再び初のベッドに上り、読書に戻ろうとしていた。
「…薮医者め。」
そして部屋を出る寸前、ぼそりと吐き捨てたそれは白兎には届かない、はずだった。
ダンッ!と開きかけていた扉が勢い良く閉まり、思わず初の肩が震える。
視線を下げると背後から伸びた脚があり、引き攣りそうになる顔を何とか抑えながら初が後ろを振り向けば、
「定期検診をお望みのようですねぇ?」
それとも久し振りに「お勉強会」でもいたしましょうか。
そう言って主治医兼教育係は『人の飼い方』を片手に、にっこりと笑うのだった。
躾は厳しく丁寧に
(そして迎えた、伊達俊一郎との対戦)
(それは八つ当たりではない、正当な権利だった)
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五周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。