MMと元詐欺師


カランコロンと来店を示す鐘の音。

少し息を切らしながら喫茶店に入ってきた青年はどうやら走って来たらしい。


瞬時に店内を見渡すと、まっすぐに迷いなく足を進めた。


「ごめん、待った?」


目的のテーブルには一人の少女の姿。

申し訳なさそうに眉をハの字にして謝罪する青年に、少女は一瞬目を見開いて「…別に」と素っ気なく返す。


その様子を、店主は苦笑しながらも微笑ましそうに見ていた。


そして続く会話は、店主の耳には届かない。


「そもそも、約束した覚えがないんだけど?」

「大丈夫、俺もないから。」


訝しげな視線を向ける少女の名前はMM、どこ吹く風で目の前の席に腰を下ろした青年は白兎と言った。


「今仕事中でさ、悪いけどちょっとだけ付き合って。」

「あ、そ。じゃあお金くれる?」

「ははっ、じゃあボスに追加経費頼まないとなぁ。」


MMの言葉を了承と受け取った白兎が笑いながら、テーブル上に置かれたMMの手を優しく握る。

見事に言葉と態度が一致しない白兎に、MMは思わず感心した。


傍から見れば、拗ねた彼女を宥める彼氏といったところだろうか。


「…さすが白兎。」

「ん?」


窓の外を堅気に見えない男達が駆けて行く。

恐らく白兎が目を逸らしたかった相手だ。


最後尾の男が一人、少し足を止めたが、結局は通り過ぎて行ってしまった。


(私がいなかったらどうするつもりだったんだか…)


そこでMMはふと思い直す。

白兎なら初対面の女性が相手でも、ものの数分で甘い雰囲気に持っていくに違いない、と。


「詐欺は詐欺でも結婚詐欺師よね。」


白兎の手を振り払い、ぬるくなりかけのカフェラテに手を伸ばす。


厭味を含んだMMの言葉に、白兎は数回瞬きを繰り返し、そして目を細めて笑った。


「俺と結婚したいって思ってくれたんだ?」





あぁ、なんて嫌な笑み!

ちょっとドキッとしちゃったじゃない。

(…骸ちゃんより金持ちになったら考えてあげてもいいわよ。)
(詐欺師から搾取しようって?さすがはMM。)


---------------
27500hitより。
キリリクありがとうございました!




戻る

嘘つき、ロンリー。