スクアーロと元詐欺師
酒や香水の匂いに、微かに混じるのは煙草だろうか。
それらがひどく鼻につき、スクアーロは無性に苛立っていた。
そして隣に佇む男に対しても。
「ゔお゙ぉい、ヘラヘラ笑ってんじゃねぇぞぉ。」
「お前の顔が怖いから、その分俺が愛想を振り撒いてやってんだよ。」
「愛想だぁ?」
そんなもの、ここで振り撒いて何になる?
そう八つ当たり気味に吐き捨てようとしたスクアーロを遮るように、給仕が一人、白兎の方へと近寄ってきた。
そのトレイの上には水の入ったグラスが一つ。
「よろしければ、こちらをどうぞ。」
「ん、ありがとう。」
白兎はそれを受け取り、まだ半分ほど中身が残っている自身のグラスと交換した。
そして給仕の背中を見送ると、「どうだ」とばかりにスクアーロへと向き直る。
「ほら、愛想を振り撒くとこんないいことが」
「あ゙ぁ?酔っ払いに間違われただけだろうがぁ!」
グラス片手に上機嫌に笑うその姿は確かに、傍から見ればスクアーロの言う通りただの酔っ払いだ。
ただし、白兎はこの会場に来てから酒の類いを口にするどころか手にさえしていない。
つい先程まで持っていたグラスも、中身はただのオレンジジュースだ。
そのことにあの給仕は気付いていたのか、いないのか。
「チッ…さっさと済ませて帰るぞぉ!」
任務のために紛れ込んだ、某ファミリー主催の懇親パーティー。
密かに『ボンゴレ転覆』を狙っているという噂だが、それが事実にしろ、あまり大した組織ではなさそうだとスクアーロは判断した。
それよりも、だ。
これ以上、この場に留まれば隣の男の悪い癖が、
「まぁまぁ。まだいいだろう?」
一足遅かった。
白兎は相変わらずヘラヘラと笑いながら、だがその目は静かに周囲へと向けられている。
それはまるで獲物を狙う、捕食者の目。
「折角のパーティーだ。楽しもうぜ?」
12時の鐘が鳴る前に
(さて、何人の人間が魔法にかけられることか)
(スクアーロはまた、小さく舌打ちした)
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嘘つき、ロンリー。