直哉と幼馴染
※微下ネタ?注意。
『…そのとおりです、なおやさま。』
幼い頃、どんなやり取りの後で白兎がそう応えたのか、直哉は全く思い出せないし別にどうでも良かったが、その時の白兎の表情だけはよく覚えている。
直哉の視線から逃れるように伏せられた目。
何か言おうとしたのか、一、二度薄く開かれては結局そっと閉ざされてしまった唇。
そして再び白兎が直哉を見上げたその瞬間、直哉はぞくりと「何か」が背筋を走ったのを確かに感じた。
だから、直哉は今日もまた―…
「あーあ、白兎君、おもらししてもうたん?えぇ年してみっともない思わへんの?」
にんまり笑って、床に広がる水の中に座り込んだ幼馴染みを見下ろしていた。
白兎の傍らにはバケツが一つ転がっており、その構図はどこからどう見ても直哉の言う「粗相」などではなく「床の拭き掃除中にバケツを引っくり返してしまい、挙げ句に転んでしまった」といったところだが、勿論直哉はそれを解った上で吐いた暴言だった。
というより、そもそも当の直哉が件のバケツを蹴り飛ばして水をぶちまけ、そこへ白兎を突き飛ばした張本人であった。
「…直哉様はお濡れになりませんでしたか?」
「はぁ?当たり前やん。グズな君と一緒にせんといてや。」
「流石です、直哉様。」
そして、やはりいつもと同じように目を伏せる白兎。
『知りませんでした、直哉様。』
まだ呪いの「の」の字もよく理解していなかった幼い頃、直哉に教え込まれた嘘を信じて、その後散々馬鹿にされた時のように。
『凄いです、直哉様。』
躯倶留隊での訓練中に、飛び入りしてきた直哉からただ一人集中的に徹底的に扱かれた時のように。
『センスがいいですね、直哉様。』
直哉がピアスを付ける際、その前に練習と称して幾つか耳に無理矢理穴を開けさせられた時のように。
口を開きかけては閉ざしてを繰り返し、ようやく直哉を見上げる。
「ちょっと着替えてきます。」
「まさか、そのまんま行くつもりやの?掃除した意味ないんやない?」
立ち上がった白兎の下服からぽたぽたと滴り落ちていくそれを指摘し、「下脱いでいきや。ついでにそれ使てここ拭いたらええやん」と直哉が提案したのは明らかな嫌がらせ。
「白兎君はほんまに気ぃ利かんし使えんなぁ。」
「その通りです、直哉様。」
その瞬間、直哉の歪な笑みはますます深まっていくのだった。
さしすせそ言えるかな?
呪術界御三家が一つ、禪院家。
その分家の中でもさらに隅の方に生まれた俺は、特に大した才能があるわけでもなかったが、幼い頃より本家預かりの身となっていた。
名目としては、俺より幾つか年下になる「ご当主様のご子息様」の世話役兼遊び相手で、俺の前には既に何人かがリタイアしているとかいないとか。
そんな噂を聞いていた母はひどく心配し、父も「本家の命令では仕方ない」と口では言いつつも何かあったら逃げて来いとこっそり耳打ちしてくれた。
だが、あれからかれこれもう十年以上。
溜め息の数は増えたものの、意外と何とかなるものだとしみじみとそう思う。
(とりあえずその名前を呼んで、適当に相槌さえ打っていればいい)
(そう白兎が気付いたのは本家に来て三日目のことだった)
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キリリクありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。