野薔薇と祖母の弟子


※『エピローグ釘崎野薔薇』の後の話。










「あー、笑った笑った。見た?あの顔。ほんっとケッサク。」


そうクツクツと笑いを噛み殺しながら隣に目をやれば、相手は未だ店の方から聞こえてくる悲鳴のようなものを気にした様子で、頻りに背後を振り返っていた。

その嫌でも見覚えのある横顔に、やや興が冷めてしまった野薔薇はこれ見よがしに溜め息を吐いてみせる。


「それで?何でアンタもおばあちゃんに付いて来たわけ?」

「え?あ、いや…それよりまずさ、『久し振り』が先なんじゃないかな…?」

「………」


確かに言われてみれば祖母の登場のインパクトがあまりに強すぎて、およそ一年振りの再会だというのにろくに挨拶を交わしていなかった。

恐らく、ひどくテンパっていた母は祖母に連れが居たことにさえ気付いていなかったに違いない。


「改めて久し振りだね、野薔薇ちゃん。」

「……おす。」

「先生が一緒に来るか?って誘ってくれたから、お言葉に甘えさせてもらったんだ。久し振りに野薔薇ちゃんに会いたかったし。」

「……………」

「でも、思ったより元気そうで良かったよ。」


(ハァ?乙女の顔面ほぼ半分を覆う眼帯を見て「元気そう」って正気かコイツ?)

(まず聞けや。「それ、どうしたの?」って。)


(「大丈夫か?」って、……)



『大丈夫?野薔薇ちゃん。痛くない?』

『はぁ?痛いに決まってんでしょ!』

『うん、そうだよね。ごめん。』



思い出したのは幼い頃の、いつかのやり取り。

ついバツが悪くなり、誤魔化すように舌打ちしてしまった野薔薇だったが、幸いなことにそれは相手には聞こえなかったらしい。


「……ねぇ、白兎…」

「うん?」

「…………」


野薔薇の祖母を「先生」と呼んだ青年、白兎は呪術の弟子、のようなもの。

ある意味、野薔薇の兄弟子に当たる。


だが、いつだって苦笑混じりに野薔薇の顔を覗き込むその姿は「兄」というよりもまるで、



「頑張ったね、野薔薇ちゃん。」



聞き覚えのある柔らかなその声は、久し振りに聞くせいかやや擽ったい。

なんて少し俯き掛けていた野薔薇は、後に続く白兎の言葉をうっかり聞き逃しそうになった。


「……は?今、何て…?」

「先生の紹介で、高専でお世話になることになったんだ。少しの間かもしれないけど、またよろしくね、野薔薇ちゃん。」

「…ったく、そういうことはもっと早くに言えっつーの。」


ごめん、と謝る白兎は相変わらずその顔に苦笑を浮かべていた。






じゃあ今夜は語り明かそうか

(まずはこれまでの楽しい愉しい呪いの話を、)
(それから恋バナとかはどうでしょう?)


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呪術祭(改)より。
企画へのご参加ありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。