甚爾と元依頼人の少年
※高専二年主設定。
「俺が高専に入った理由?」
「はい。」
とある任務の帰り。
手違いから少し迎えが遅れるという補助監督を待つ間の、それは単なる世間話のつもりだった。
「そう言えば聞いたことなかったな、と思って。」
「そう言えば言ったことなかったな。」
恵の言葉にオウム返しのように返した相手は少し考えた後、「別に大した理由じゃないよ」と続けた。
恵の一つ上の先輩で、術式の相性かそれとも力量の関係からか、よく任務で組むことの多い白兎。
天与呪縛、呪言師、呪骸、特級呪術師と個性豊かな同級生達が立ち並ぶ中で一見普通に見えるものの、普通だからこそ異質であり、恵にとってある意味一番謎の人物だった。
だから、少し興味があった。
そして、再び考え込む素振りを見せた白兎がゆっくりとその口を開く。
「両親が呪術師だったんだ。」
「そうなんですか。」
「それで、よく知らないけど俺が生まれる前からあまり仲が良くなかったらしい。」
「へぇ…」
「結局離婚して、それでも気が済まなかったらしくて、お互い呪い合った挙げ句に最終的にはどっちも死んだ。」
「え、」
「ん、あぁ、呪術師というより呪詛師だったな。」
「いや、気になったのはそこじゃなくて…」
恵が戸惑ってしまったのは世間話の域を超えた展開と、そこから一体どう先程の質問の答えに繋がるのか解らなかったから。
改めて聞き返すべきか、だが今の話をこのまま聞き流してもよいものか?
そんな恵に対し、白兎が不思議そうに首を傾げた。
「何の話だったっけ?」
「………」
「あぁ、高専に入った理由か。」
「……まぁ、…はい。」
「呪術師になれば、それなりに稼げるかと思ったんだ。」
「………」
まさかの金銭目的というシンプルな答えに、色んな思いを飲み込んだ恵は「そうですか…」と返すのが精一杯だった。
(…あぁ、やっぱり似てるなぁ…)
ようやくやって来た補助監督の車に乗り込む後輩の後ろ姿を見つめながら、白兎はぼんやりと昔の記憶に思いを馳せていた。
『―…殺して下さい。』
死んだ母親の傍らで見上げた、一人の男の姿を。
『あ?』
『母を殺すように頼んだのは、父なんでしょう?…今の俺には殺せないんで、代わりにお願いします。』
『は、俺は高いぞ?』
『出世払い?って出来ますか?それとも身体で払う、とか…?』
『…お前それ、意味解って言ってんのか?』
呆れたような表情をしながら、男はしばらく不躾にジロジロと白兎を見下ろし、そして面倒臭げに舌打ちした。
『オヤがオヤならガキもガキだな…まぁ、いい。どうせお前もいずれは呪術師になんだろ。』
そして白兎の母親を、結局父親をも殺した呪詛師がその後も白兎と行動を共にしていたのは、恐らく将来的に支払われるであろう報酬目当てに違いない。
何故かある日を境に突然居なくなってしまったが、それでも白兎は―…
「白兎先輩?」
「…あぁ、ごめん。今乗る。」
世間は狭い
(それは思った以上に)
(思わぬほどに)
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呪術祭(改)より。
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嘘つき、ロンリー。