棘と『特別な子』
※棘√。
俺は特別だ。
選ばれた存在だ。
他の奴らとは、違う。
だというのに、どいつもこいつも馴れ馴れしく寄ってきては親切ヅラの友達ヅラ。
どんなに親切心で「俺に関わるな」と忠告してやったところで全く聞きはしない。
まぁ、そもそも普通の人間に「それ」を察しろと言う方が無理な話なんだろうが。
だから、一目で解るようにしてやった。
上から下まで全身を覆う漆黒。
獣の本能が警鐘を鳴らす、一寸先も見えぬ闇の色。
この先キケン、立ち入り禁止。
だから―…
「だからもうっ!放っておいてくれよっ!!」
慣れない大声を繰り返し発し続けたせいで喉が痛い。
だけど、返ってきたのはそれ以上にひどく嗄れた声だった。
「……ぉががぁ…」
とくべつなこと
「……馬鹿だろ、お前…」
任務を終え、事後処理に追われる補助監督官の姿を眺めながら喉薬を呷っていると、ぽつりとそう吐き捨てるように声が聞こえてきた。
棘の傍ら、蹲るようにして座り込む黒いパーカー姿。
今回の『依頼対象』。
終始フードを目深に被っているため、その表情はずっとよく分からないままだが。
「何で放っておかないんだよ…俺は特別なんだ……」
特別だから。
選ばれた存在だから。
他とは違う、だから。
ぼそぼそとこぼれ落ちる言葉に棘はつい眉を顰め、きっとここに真希がいれば迷わず殴り飛ばすところだろう、なんて思った。
いや、ここは級友に倣って一発いっておくべきか?
正直に言えば、少し疲れてイライラもしていた。
だから思いっ切り拳を振り上げようとした、その瞬間。
「…俺 … なれば、 だ…」
「…………」
少し考え、思い直した棘は振り上げていた手をそのまま下ろし、フード越しにその頭をポンポンと軽く撫でた。
「お待たせしてしまい、すみません。狗巻くんと、えっと…白兎くん、でしたよね?この後のことですが、とりあえず一度高専に向かいますので。」
「しゃけ。」
「白兎くんはその後でご自宅まで送る、ということでいいですか?」
「…………」
白兎、と呼ばれたフード下からの返事はない。
困った様子の補助監督官に、棘は代わりに「しゃけしゃけ」と返したのだった。
(「俺一人、犠牲になれば済んだんだ…」)
(どうやら目深に被ったフードは泣いているのを隠すため、だったらしい)
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呪術祭(改)より。
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嘘つき、ロンリー。