我牙丸と部活仲間
『我牙丸は犬だ、犬だと思え。』
突然真顔でそう言って俺の両肩を掴んできた友人に、正直「こいつ、大丈夫か…?」と心配になった。
部活を終え、帰り支度をしながら何気なく話していた時のこと。
「今度の休みの予定は?」と友人に振られ、俺はただ「我牙丸と遊ぶ」と答えただけ。
そう言えばいつだったか、相手は我牙丸と同中だったという話を聞いた覚えがある。
しかし過去に何があったかは知らないが、「犬だと思え」は流石にちょっと―…
…なんてことがあった数日前を思い出しながら、俺は地面に大の字になって倒れ込んでいた。
視界いっぱいに広がる、雲一つない青空が眩しい。
と、不意にそれが少し陰る。
「白兎。」
「…頼む、我牙丸…もう少し、もう少しだけ休ませてくれ……」
「分かった。」
我牙丸と共に山の中を駆け回ること一時間足らず。
情けなくも音を上げた俺に我牙丸は素直に頷くと、そのまま傍らにしゃがみ込んでじっと俺を見下ろした。
その表情は相変わらず読み辛いが、くりくりの真ん丸い両目は何となく「物足りない」と訴えているような気がして本当に申し訳なかった。
しかし普段からこうして体を動かしていたのならあの超人的な身体能力は納得だな…と思っていれば、それは無意識に声に出ていたらしく、一人の時は瞑想をしてるとか何とかと返事が返ってくる。
つまり、俺のせいか?俺という遊び相手がいたから今日の我牙丸はついつい張り切ってしまったのか?
(…次に「我牙丸と遊ぶ」と言うやつがいたら、俺も忠告してやろう…)
我牙丸は犬だ、犬だと思え。
いや、それどころか熊かもしれない。
すると俺はまた声に出してしまっていたらしく、「呼んでくっか?」と首を傾げる我牙丸。
一体何を呼ぶつもりなのか、聞き返すのが怖かった俺は誤魔化すように我牙丸に向かって手を伸ばした。
無造作なそれに一瞬ビクッと我牙丸は体を強張らせたものの、構わずその頭を掻き撫でてやる。
「………」
「よーしよしよし。」
次に遊ぶ時はボールでも持ってこよう。
サッカーなら俺ももう少しマシな相手が出来る、と思う。多分。
それでもダメなら「ほーら、取ってこーい」と投げてやれば…
「……我牙丸?」
ふと、大人しく撫でられていた我牙丸がゆっくりとこちらに顔を寄せてくるのに気が付いた。
不思議に思って名前を呼んでみるが返事はなく、その表情も相変わらずで何を考えているのか解らない。
そして、お互いの鼻先が触れ合いそうになっても我牙丸が止まる様子は、ない。
「……ちょっ…が、我牙丸?我牙丸くん?待て、待て待て待って、うぎゃ!?」
慌てて間に手を割り込ませると、べろりと舐められた掌に俺は思わず悲鳴を上げてしまった。
食べても美味しくありません!
(…しょっぺ。)
(だろうな!?って、おいこら止めろ!乗るな乗るな、上にのし掛かってくるな…!)
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嘘つき、ロンリー。