黒名と同級生


「なぁ、黒名。」

「ん。」

「俺の髪イジるの、もう止めない?」

「止めない。」


間髪入れずそう返ってきた言葉に、思わずそちらを見ようとすれば「まだ動くな」と顔を元の位置に戻された。

黒名って意外と力があるなと思った、じゃなくて。


元々髪をイジる癖のある黒名は最近、自身のものだけでは飽き足らず俺の頭にまで手を伸ばすようになった。


「俺のなんてイジっても楽しくないだろ?大して長さもねぇし。」


いや、ここ数日で何となく長くなったような気がする。それも黒名がよく触る左側だけ。

髪は結ぶと伸びやすくなるらしいので多分そのせいだろうが。
(あと「エロい人間は髪が伸びやすい」って話も聞いたことがあるが、あれは一体どういう原理だ?)


「出来たぞ。」


なんて考え込んでいる間に黒名から声が掛かった。

生憎手鏡なんて小洒落たものは持っておらず、とりあえず近くにある窓ガラスの反射を頼りに自分の姿を確認する。

そして結われた辺りに触れてみれば、やはり心なしか、その辺りが少しだけ伸びているような気がした。


(けど、やっぱり俺がすると変だよなぁ…)


もしかしたらこれは、いつだったか黒名をチビ扱いした仕返しなのかもしれない。

それともこの間、黒名にやったヘアゴムが気に入らなかったとか?


…とも思ったが、「お揃い、お揃い」とどことなく楽しげな黒名を見て諸々を飲み込むことにした。


(まぁ、仕返し云々はないみたいだし…別にいいか。)


ちなみに余談だが、後で調べてみたら髪を結んだところで伸びやすくなる訳ではないらしい。

逆に長時間結ぶと血行が悪くなって髪の成長の妨げになるとか。


…ぜひとも黒名には俺がハゲる前に何とか止めて欲しいところだ。





ひとまずエロいことでも考えようか
(それも迷信、だそうですが)





『黒名、そこじゃよく見えないだろ?こっち来いよ。』


そう手招きしながら、わざわざ隣にスペースを空けてくれた白兎。


『誕生日おめでとう。これ、プレゼントな。』


そう言って、笑って鮫のチャームが付いたヘアゴムをくれた白兎。


あの時もこの時も、触れたその手が暖かかったことを黒名はよく覚えている。




(手が暖かい人は心が冷たい?)
(迷信は信じないタイプです)


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嘘つき、ロンリー。