>>2015/10/28 (Wed)
>>15:24
『RX-VISION』
復活に感謝。


これほどチームに所属していて嬉しいことはないと、今、ぱきりと煌めくソウルレッドを目の前にして大袈裟に思った。

なんという、引き込まれる空気か。

「率直な感想を」
「もし彼が家に居たら、助手席に私を乗せてどこへ連れていってくれるんだろうってわくわくするわ。馴染み親しんだ道に、彼の、真っさらな音が響く。FCとFDが刻んだ場所へ、彼も続く。歴史が継がれていく。とても感慨深いと思うの」
「アネキ語るねー」
「今のは『車好き』としての感想よ」
「ほう。さて、メカニック様にはどう映る」
「…まるでSAやコスモを見ているみたい。あの長いノーズは原点回帰を表しているのかしら。スペックがまだわからないから憶測だけれど、最新ロータリーはサイズが大きいのかしらね。縦型コンパクトがロータリーの基本であるのに、いや、もしかしたらその基本すら、スカイアクティブは覆したのかも」

チームスポンサーの縁あって、プレス公開日初日の東京モーターショーに兄妹弟揃って招待された。国際展示場へ着くなり誰よりも急いたのは、啓介だった。

「はあ〜コイツがオレたちの後継かあ〜でもFDのがグラマーかなぁアニキ」
「お前まずは姉上のスポンサー様に挨拶が先だろうが。誰のおかげでここにいると」
「連絡したらゆっくり見ていていいよって仰ってたよ。お言葉に甘えようよお兄ちゃん」

以前より飛び交っていた、RXを冠する後継車の情報。うずうず、わくわくと、誰もが公開日を待っていた。

ひとりの車好きとして、そしてメカニックとして、感想を述べる。ずっとこの赤を見ていたい。前から後ろへ流れる美しい一本の線。低く重心を落とした車高。そのボディ設計は、今すぐ走り出さんという躍動に駆られたもの。

「いつか」
「ん?」
「サーキットに来るかな」

今は見かけなくなった、ロータリーのGT車両。

「来るさ」

涼介が頭を撫でた。

「NSXコンセプトやRC Fは、市販化される前からGTを走っている。ZN6だって、発表されて瞬く間にレース界へやってきた。アイツも、すぐやってくるよ」
「だとしたらアネキ強敵だぜ、絶対」
「うん。楽しみだな」

その日を待ってるよ。
おかえりなさい。


*****

>>2015/11/02 (Mon)
>>19:44
『NSX CONCEPT』


サーキットで見慣れている。
とは言えなかった。

(真剣…)

自分より遥か背の高い豪の視線は狂わず、正面を見る。隣の私を、自分の世界から除くような強さで。そんな目をされて言えるほど私は野暮じゃない。

「すげェな」

小さく零した彼の声は、きっと私にしか聞こえない。楽しそうだった。

「買おうかな」
「えっ」
「まじ」
「お高いのよ?」
「オレにそれを言うか?」
「おぼっちゃま発言は嫌い」
「お嬢さまが何を今さら」

名前を継ぎ何代も歴史を紡ぐものとは異なり、たった一代で歴史を築いた不動たる大きな存在。一度消えたその存在は、ようやっと、現代に戻ってきた。

「早く来いよな新NSX。オレとあいつで出迎えてやるぜ」
「乗り換えるわけじゃ」
「ねーよ。あいつはオレの宝だ。二台とも可愛がるさ」

市販化が進み、ディーラーに並ぶのももう間もなくだ。そのために費やした時間や努力は、いつもそばで見ていたから充分にわかっている。強さ、速さを証明し、ポディウムに上ったドライバーや御大の笑顔が、この日を待っていたすべての人に更なる希望を与えてくれた。

だってここにも。
楽しみで仕方ないって顔で、笑ってるものね。


*****

>>2015/11/07 (Sat)
>>21:53
『twitter140字ssリメイク』
twitterで夢書きさんたちとお互いのss交換してリメイクして遊んでます。


<<リメイクしました>>

【さやちゃん(@mimi_8731)】
時々妙義で会う顔見知りの彼。しっかりしているようでどこか抜けてる、ちょっと不器用なあの人を、今日は街で見かけた。ネクタイを締めて袖捲りした、働く姿に心臓が跳ねる。一服している彼に「お疲れ様です、中里さん」と缶コーヒーを差し出せば、驚き顔で受け取る彼。触れた熱に、恋の予感。

【私】
今正に考えている人が目の前に現れたら誰だって驚くわ。それも夜の妙義山じゃなくて昼間の街で。ベンチで首元を緩めシャツを腕捲り。その少しの無防備さに視線がいく。「お疲れ様です、中里さん」私が誰それか気付いた彼に、仄甘いコーヒーを。触れた指先が熱いのはきっと、晩秋の陽射しのせいだから。


【藍ちゃん(@fd7chu)】
後方に停車したアルテッツァから降りた男性が私を見下ろす。「勝ち逃げなんて、許さないからな」鋭い眼付きに心臓が揺れた。私が走る理由はひとつ。あなたに追われたかっただけなんです。この関係はまだ、終わりじゃないんですね。「…何故笑う。馬鹿にしてるのか」『いえ。いつでもどうぞ、秋山さん』

【私】
あなたに見つめてもらいたかった。銀眼鏡の真摯な目で、追われたかった。「勝ち逃げなんて、許さないからな」そのために走りとクルマを学んだって知ったら驚く?なんて考えたら可笑しくて彼を困らせた。『いえ。いつでもどうぞ、秋山さん』チャンスを終わらせたくないから。私はもっと速くなれるの。


<<リメイクしてもらっちゃいました>>

【私】
気まぐれが彼を救った。フードを開けて、回らなくなったRB26に触れたら熱さに指を引く。参ったと、仕方なく仲間にヘルプコール。(…不本意だぜ)『ぷぷっダッサいなあ毅、とまったの?しょーがないから行ったげる』スパナを握るのは彼女の気分次第。チームの整備士様は、ご機嫌麗しいようだ。
※『気まぐれが彼を救った』から始まるssお題を、夢は整備士だったというフォロワーさんにお贈りしたもの。

【みとちゃん(@M_140write)】
今日はイイコトが続いたから気分が良くて自他共に認める気分屋のあたしも珍しく最初から参加した。それでも自分で流す気にはなれず頂上にいる面子と下らない談笑をしていれば携帯が震えた。表示された名前に思わずニンマリ笑みが零れる「ぷぷっダッサいなあ毅、とまったの?しょーがないから行ったげる」


【私】
空中でばらばらになった僕の想いは、塩原の星屑なった。なんてロマンチックに片付けられたら楽なのにな。その原因は尊敬する先輩にあるから余計に厄介で。今の今まで隣にいた彼女は、その音を拾った途端に瞳をきらきらさせて、弾むように、彼の元へ。慕う視線が、慕われる想いが、僕は欲しかったのに。
※『空中でばらばらになった僕の想い』から始まるssお題を、酒井の片想い相手は智幸さんが好きというお話。今年2月に藍ちゃんへ贈ったもの。

【みとちゃん】
彼女の視線が誰に向いているのか、それに気づいてしまったのは自分が同じように彼女を見つめていたから。彼女の視線の向く先が、知らない相手ならよかったのに、と何度思ったか知れない。今夜もまたあの人の元へ走り去る背に、行き場のない想いを塩原の星屑相手に吐き出して、それはいつも霧散する。


【私】
真夜中のカルテットを聴いて、狂いなく同調する音に安心した。呼吸と破裂。繰り返す四気筒の動悸。うん、どこも悪くない。「終わったか」「はい。お待たせしました」「…こっちを向け」「え?ん、京、い」「頬にオイルがついていたぞ」「…普通、キスで拭きますか?」なのに私の動悸は、狂ったままだ。
※『真夜中のカルテットを聴いて』から始まるssお題で、京一さんと真ん中。四重奏と四気筒と心臓の四部屋をかけたもの。

【藍ちゃん(@fd7chu)】
安堵と共にボンネットを落とした。「終わったか」「はい。お待たせしました」「…こっちを向け」振り向く刹那柔い衝撃。「頬にオイルがついていたぞ」「…普通、キスで拭きますか?」呆れ声を絞り出した私の動悸が狂い出して思わず顔を背ける。ああ、こんなの彼を煽るだけ。気付いた時にはもう手遅れ。

>>2015/11/15 (Sun)
>>12:19
『さよなら、ありがとう』

CR-Zに感謝を込めて。姉ちゃんと啓介、雨の茂木。

*****

事前の予報はわかっていたのだから、雨が降ること自体は驚いていない。しかしフリー走行の結果から見出したタイヤ選択は予選において、予報以上のこの雨量を前にし全く意味の無いものになった。

「ほら、なにぼっとしてんのドライバーくん」
「あねき〜明日ムリだってこれ」

予選Q2の最中、コースに生まれた雨水の川。インターミディエイトが通用しなかった。冷たい気温と路温ではタイヤの温まりに時間がかかる。ソフトレインに変えるタイミングを完全に失い、現タイヤを出来るだけ温めることに専念した結果、本日決勝のグリッドは。

「有終の美を飾る、きれいな雨じゃないの」


昨晩。

気になることがあると言い、他のクルーを見送ったあとひとりでピットガレージに残っていた。

(泣かないわ)

自陣のマシンは、今季限りでGTから去る。そういう契約だった。受け入れる覚悟はあった。

(最後は一番前から、走らせてあげたかったなあ)

ルーフに書かれた『ありがとう』を指で辿る。先程まで動いていた車体から、ぱきん、ぱきん…と軋む音がした。

「たくさん勉強させてくれて、ありがとね」

このマシンは、成長の証。私たちはこの子で頑張ってきたんだという、誇りの証。全員の心が篭った最後のマシンだからこそ、雨になんて負けたくなかった。決勝グリッドは、9番手スタート。

「もうちょっとだけ、みんなに力を貸してね…。明日、いっぱい、いーっぱい走ろうね」

リタイアなんて絶対させない。
クラッシュなんて目じゃないわ。
エンジンブローだってパンクチャーだって直してみせるんだから。

しゃがみ、車体へ寄りかかる。目をつぶる。深呼吸したら、馴染んだオイルとタイヤのにおいに鼻がすん、と鳴った。

「がんばろうね。一緒に勝とうね」


そして翌日。小雨のグリッド。スタート3分前。

「啓介」 
「あ?」
「怖がっちゃだめよ。ちょい濡れだろうが土砂降りだろうが、攻めて。これ、監督指示」
「絶対ェうそだろアネキ!あーあーコチラ啓介、監督どーぞ!」
『そいつの言うとおりだ。思いっ切り踏め。啓介、何かあっても気にすんな』
「マジだったのかよ!」
「雨を口説くにはどうすればいい?恋人にしたくてたまらない人を、啓介はどうやって口説くのかしら?」
「…そーいうこと。任せとけアネキ」

恐れと迷いは付き物。勝利への打開策はひとつじゃない。進む先への不安を気にしていては、成長なんて出来やしない。

教えてくれたのは、このマシンだった。

最終戦、みんなの願いを込めた最後の咆哮が、今。


*****

>>2015/11/23 (Mon)
>>22:22
『兄と妹と兄』


珍しいお客様がソファにいらしていた。なぜか、兄と並んで座るその真ん中がひとり分空いている。帰宅した私に兄が手招きをし、こちらへおいで、と目で誘う。誘われ、挨拶もそこそこにすとんと座った。

「い、いらっしゃい凛さん。お久しぶりです…」

右に涼介、左に凛。私の両手をそれぞれに取られ、さわさわと撫でられた。

「あの、これは一体…」
「涼介と話し込んでいたらお前の帰宅時間がそろそろだと言うから待たせてもらった。ダメだったか?」
「いえそんな!私も久しぶりに凛さんに会えて嬉しいです」
「ふ、そうか。かわいいなお前は」

言うと凛さんは私の左手を持ち上げ、ちゅ、と甲に口付けた。驚いたけれど、伏せたセクシーな目元に視線が奪われて逸らせない。かああっと顔が熱い。帰宅して早々、なんの悪戯かと思っていたら。

「こら、お兄ちゃんにただいまのキスは?ん?」

涼介が黙っていなかった。少々強く引かれた右手につられ、からだも涼介へ向いてしまう。兄の指は長くてしなやかだ。その指で顎を取られそのまま掌で頬を包む。ふにふにと頬肉を弄ばれ、涼介は柔らかく笑った。

「おにいひゃん〜?」
「はは。睨んでも無駄だぞ、かわいいだけだからな」

こつんと額を合わせ、鼻頭にちゅ、と口付けた。涼介の吐息とコロンの香りがものすごく近くにある。そのまま、兄は語り出した。

「おい涼介近いだろう。離れろ」
「先輩とな、賭けをしたんだよ」
「…どんな?」
「なんだと思う?当ててごらん」

額を合わせたままで甘く話す言葉はまるで恋人への囁き。涼介特有の優しい低声が痺れのように耳に残る。ふるふる、と首を横に振って、わからないと答えた。

「どっちがお前を幸せにできるか、ってね」
「え?」
「北条に来てくれるよな?未来のオレの妹よ」
「いも、え、…ってええッッ!?」
「嫁には出さないと言ってますよね先輩、コイツは一生オレと啓介のモノですから」
「嫁の貰い手がないとお父上方も嘆かれるぞ。ウチなら申し分ないだろうが。さあ、お義兄ちゃんの元へ」
「行かせませんし父も母も娘が愛しくて嫁に出す気はありませんからご心配なく」

気付けば両兄が私とかなりの至近距離で討論している。その間、さり気なく髪を撫でたり腰に手を回したりと、兄たちには余念がないようだ。

(まったく…子供みたい)

あのヒトも、この姿を見たら同じように思うかな。お兄ちゃんと凛さんから聞いた『幸せにしたかったヒト』のことを思い出して、私は笑った。

「私は今、充分幸せです。お兄ちゃんも、凛さんも、大好き!」

だから喧嘩はダメです。
その言葉をキスに込めて、兄ふたりの頬へ贈った。


*****

>>2015/11/25 (Wed)
>>21:59
『every breath you take』
豪さんと真ん中。


家族を見慣れてるせいもあって、美形への免疫は高いと自負していた。だからつい、物怖じせず彼の顔をただじっと見つめてしまうときがある。

(美形、とは少し違うんだよね…パーツがしっかりしてるというか、濃いというか)

名は体を表すというのは本当らしい。その力強い目で、自分は恋に落ちたのだ。

「ンだよさっきから。落ち着いて本読めないんだけど」

今日は北条邸へ訪れている。お父上や凛さん所蔵の書籍に興味があって、豪に頼んで書斎へ入室させてもらった。大きなソファに豪が、私は向かい側の一人掛けへ座る。振り子時計の針と、ページをめくる音だけが続く静かな書斎…だった。

「見惚れたんだろ」
「だれが」
「おまえが、オレさまに」
「自意識過剰やめて」
「ふうん…?」

にやりと笑って豪は立ち、私の一人掛けソファのアームレストに腰を預けた。読んでいた本を強制的に閉じられ、そのまま手が頬へ。

「ちょっと」
「ん?」
「読めない」
「自分だけ見といて、オレに見させてくんないの?」
「は?」
「今度は、オレがおまえを見つめる番、な」

手に少しだけ力が入り上を向かされ豪を見上げる形になった。だけど。

「ッ…」
「こら、目ェ逸らすなよ」

悪戯を企むとか、楽しそうとか、そんな目じゃなくて。

「かわいいおまえが、もっと見たい」

心を持っていかれる。射抜かれる。遊びじゃない、真剣な目で見つめるから。

「だ、だめ」
「なんで。おまえばっかズルくね?」
「見ないで、私なんか」
「なんかってなんだよ。自分のカノジョ見ちゃダメなの」

すごく、すごく恥ずかしかった。心臓がうるさい。顔が、からだが熱くてたまらない。頑なに顔を逸らしていたのに、それでも豪は、喰い下がる。

「なあ、見せて。ん?」

低く、少し掠れた甘い囁き声。吐息を含ませたのは絶対にワザとだ。観念して、そうっと顔を向ける。

「〜〜っもう…!」
「ははっおまえ照れすぎ」
「ずるい、そんなの」
「睨んでもムダ。ねぇカノジョ、キスさせてよ」
「えっ顔見るだけって!」
「ンなわけあるかばあか。男心に気付けっての」
「わかんないン…っ、ん…」
「…かわいい。すっげぇかわいい。ね、もっと、シて、いい?」

そんな目で見ないでよ。
すぐ堕ちちゃうじゃない。

ばあか。


*****
>>2015/11/29 (Sun)
>>18:48
『また来年も』
JAF表彰式ネタで真ん中。


プロのメカニックになって、初めて貰った賞だった。

「お、お、お母さん!お着物!明日お着物着るから出してー!」

年間スケジュールがすべて終わった週末。協議会が選んだ受賞者欄に自分の名前が載っていると知ったのは、つい昨日のこと。そして週末に行われる受賞式典。身支度に使える時間は僅かしかなく、焦る。偉大なる御大方々が多数列席される会に煌くパーティードレスは不都合で、かと言って成人式の振袖も最高位の正装とは言え派手すぎる。ならば。

「孫にも衣装」
「チャンピオントロフィー奪っていいですか?」

来季負けませんよと、今季GT戦の優勝ドライバーやチームと共に記念撮影。冗談交じりのいがみ合いを言いながら和やかな授賞式が開かれた。

式典が終わり、写真をSNSにアップしグループLINEで友人らにも報告すると、いきなりのレスポンス。受賞のこと、写真のこと、着物のこと…特に着物については、急いで用意してくれた母に感謝したくなるほどの賞賛の言葉たちだった。

「訪問着にしてよかったあ。お母さんありがとうだよ」

薄桃色の着物には小花柄、薔薇色の帯には金刺繍。優しいピンクのグラデーションの佇まいに、数々の御大らからも『似合っている』とお褒めの言葉を頂いた。胸元にある受賞記念の盾をぎゅっと抱き締める。何度見ても頬が緩み、嬉しさを抑えることが出来ない。

「はあ…うれしい。初めてだあ…。へへ、メカニックやっててよかった!」

家族からも続々とメールが届く。『帰りに病院へ寄って見せてくれ』と父。『とても喜ばしいわ!』と母。『オレのアネキ!かわいい!マジかわいい!すげえ!おめでと!』と啓介。

「…お兄ちゃんたら」

『迎えに行くからそこで待ってろ。今、学会で新宿にいる。お前はオレの自慢だよ』

自分を高めてくれた兄に自慢だと言われ、嬉しくないことがあろうか。たくさん『おめでとう』と言われたけれど、御大方々にも賞賛を頂いたけれど、涼介の言葉が、自分にとって何よりの誉れだ。この言葉を貰うために、今まで頑張ったとも言えるほど。

「来年も、言ってほしいな。がんばろ」

もう一度、胸元の記念盾に目を落とす。盾には『ベストメカニック賞』と自分の名前が彫られている。彫刻の溝をなぞり、微笑んだ。式典会場の前に、白い馬ならぬ白いFCが停まり迎えに来てくれるときを、今か今かと待ちながら。


*****