M
>>2013/04/21 (Sun)
>>17:28
MMiniと32と皆川英雄(彼女)
************
今日は私が迎えに行くね
と、連絡があってしばらく経つが一向に現れない。もうそろそろ到着してもいい頃合いなのに、と心配になってきたところで、小さな赤い車がこちらに向かって来た。
近代的なフォルムのBMWではなく、クラシックミニと呼ばれる、先代のミニクーパー。英国らしい鮮やかな赤色が自慢だと、いつも笑顔で話していたっけな。
「遅かったな、何かあったのか?」
「ごめんね、ちょっと、駐車場から出るのに手間取っちゃって」
それを了承した上でハンコを押したのだから、文句は言えない。欠点までも可愛いと思える彼女の車への溺愛は、正直、理解できなかった。
天気の良い、春の日。
(一応)四人乗りである小さな車の後部座席を見ると、レジャーシートと、水筒と、大きめのバスケット。そう言えば、今日どこに行くか、昨晩の電話では決めていなかったな。
「昨日もお天気良かったから、大丈夫かなと思って」
「何がだ」
「芝生」
「は?」
「濡れたところに、シート轢きたくないじゃない」
話が読めないな、これは
「……おべんとう、作ってきたの」
ぼそぼそと、かろうじてエンジンに紛れることのない声量で聞こえた。
「がっ、頑張ったんだから」
ちら、とこちらを見る彼女の目が、少し赤かった。
「お誕生日、でしょ、英雄の」
ぐっ、と、ハンドルと握る彼女の手に力が籠った。
「……そこ、曲がらずに真っ直ぐ行け」
「え…?」
「駅裏の公園じゃなくて、夏にプール行ったろ、あの公園にしよう」
確かフリーペーパーの情報誌に、ツツジが見頃だと書いてあったから。
「少し山道になるが、ハンドル、大丈夫か」
「…がんばる。けど、もしものときは、助けてね?」
もう一度、彼女の手に力が籠った。
バスケットはオレが持って、レジャーシートと水筒(見たらユニオンジャック柄だった)はアイツが持って、空いた手を、お互いで繋いだ。
ツツジが見える小高い芝生は、太陽を受けて温かかった。
「32歳、おめでと、英雄」
「ありがとな」
卵焼きに刺さっているピックが『3』と『2』なのは、オレのための数字なのか、愛車の数字なのか、果たして。
とりあえず今は、滅多に料理なんてしない彼女の愛を大事に頂こうと思った。
*********
パワステが思うように効かないミニのお話。イメージは1990年代のクーパーです。かわいい。ユニオンジャックの水筒は笑うところですよ皆さま(^w^)@5th
昨日4/20は、実兄のまさに32歳のバースデーだったので!ごめん兄ちゃんネタにした!\(^o^)/{オメデトウ!