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>>2013/11/13 (Wed)
>>23:06
Dearest my Daughter, my Daddy(文太)

お相手:文太
ヒロイン:藤原家長女

文化祭のお話。文化の日11月3日に上げる予定でした…遅くなりました…。

拓海=高1、ヒロイン=高3、姉弟です。ほのぼの。

コチラからどうぞ。

「祐一さん、こんばんは」
「おお、ななみちゃんいらっしゃい」

拓海にはふたつ上の姉がいる。今年高校3年の受験生だ。彼が春からバイトを始めたガソリンスタンドに、何故か姉がいる。

「背景が緑の写真なんて昼間の山しかなくてね、夜の写真ばっかりだから探すの苦労したよ」
「ごめんなさい、どうもありがとうございます」
「順調かい?」
「うーん、あと黄色が足りなくて…」

拓海が備品を手に倉庫から出てきたとき、ソファ席のテーブルで店長と姉が話し中だった。時計を見ればて19時。学校はとうに終わったはずだ。制服のまま、姉は遅くまで何をやっていたのだろう。

「姉ちゃん何やってんの」
「あ、拓海、お疲れさま」
「それ、なに?」
「うーん、まだヒミツ」
「なんだ、拓海は知らんのかこのこと」
「当日まで言えないの。祐一さん、絶対見に来てね!」

テーブルに拡がる写真たち。どれもに車が写っている。赤や青や黄色の派手な車、森のような木々の写真もある。その中で、藤原家のの車がいくつか見えた気がした。

────

11月3日は文化の日だ。芸術の秋になぞらえて、近い休日にの文化祭を催す学校が全国にごまんといるだろうこの日。拓海とななみが通う渋川の高校もそのひとつだった。

「行ってやりゃいいじゃねーか文太」
「めんどくせェ」
「最後なんだろ、ななみちゃん。見に行かねェのかよ」
「誘われたんならお前が行ってやれよ祐一」
「親父が行かなきゃ意味ねェだろーが」

藤原豆腐店、居間。文太いるか、と馴染みの声で呼ばれ、なんだ祐一か、とお決まりの声で文太は返す。いつも通り煙草をふかして新聞を開き、ちゃぶ台には玄米茶。ずず、と啜っていると、祐一からダメ出しを喰らった。

「興味ねェよ文化祭」
「興味あるなしじゃねェだろ!ななみちゃん、お前に見てもらいたいって言ってたんだぞ」
「…ンだよ祐一、ヤケに知ってるんだな、ななみのこと。そんなに仲良かったっけか」
「手伝ってくれって頼まれたんだよ、学校帰りにわざわざスタンド寄って」

ちょっと面白くない、と文太は思った。親に言わず、一体何をやっていたというのだろう。なんだかんだ、娘のことは気がかりなのだ。

────

少しだけイライラしながら走らせたハチロクを、開放されている校内の駐車場に停める。外に降りて煙草に火を点けようとしたら『少しくらいガマンしろ』と祐一に奪われた。昇降口でパンフレットなるものをもらい、文太は恐らく拓海の入学式以来の校舎へ入る。クラス毎に教室で催事を企画し、一般客をもてなす模擬店を展開しているようだ。そちらにはてんで興味がないので、とにかく目的のものを見て早々に帰りたかった。

「美術部なんだな、ななみちゃん」
「そうなのか」
「お前な、文太」

芸術棟4階、美術室。パーテーションや照明を駆使して、今日だけの特別な美術館と化しているらしい。各自好きなものを好きなように展示しているのか、絵画や彫刻、大きさもジャンルも様々だ。

「娘の部活くらい知っとけよ」
「…ずいぶん前に聞いたような気もする」
「あれ、親父。と店長」

美術室に入ってしばらく。どうやら拓海も来ていたようだ。

「親父が来るなんて意外」
「ムリヤリだ」
「素直じゃねーなァ本当」

姉ちゃんのこっち、と拓海が誘導する。

「こないだスタンドで見てたのって、コレだったんですね店長」


『Dearest My Daddy』
3-B 藤原ななみ


黒板、だろうか。
大きな長方形いっぱいに敷き詰められた、サイズを縮小した色とりどりの写真たち。
それらはすべて、文太が走ってきた軌跡を撮ってきたもの。
ひとりの走り屋だった頃。ラリー時代のライバルたち。今の生活。
白、黒、赤、黄、緑。絵画のようなコラージュ。

秋名の森を駆け抜ける、『藤原とうふ店(自家用)』だった。


「あまり近付いちゃ意味ないからね、お父さん」
「…」
「大変だったんだよー、ね、祐一さん」
「政志にも頼んだんだっけな、確か」
「そうなの。政志さん、知り合いの人たちにも声かけてくれたみたいで、現役時代のお父さんの写真たくさんお借りしちゃった」
「これホントにウチのボロいやつ?姉ちゃん」
「そうだよ、拓海。あの子って実はすごいんだから!でしょ、お父さん」

美術部で順番に監視員を請け負っているらしい。時間交代で、ななみが美術室にやってきた。

「…」
「おい文太、何か言ってやれよ」
「……お父さん、もしかして、勝手に写真使ったの、怒ってわああっ!」
「……最高だ。いい出来じゃねェか」

来てよかった。素直にそう思った。
不安げに父を覗き込んだななみの頭を、文太はめいっぱい撫でてやった。娘はくしゃくしゃになった髪のまま、うれしい!と大きく口を開けて喜んでいる。

(果報者だねェ、オレもお前も)

姉弟の運転の腕は拓海が上だが、ハチロクを愛してくれる気持ちはななみの方が断然上だ。いつかアイツを拓海に譲る気でいたけれど、考えを改めるべきかと思う、文太なのだった。




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ぶ、文化の日のお話ですみません。11月3日が過ぎてしまいました…。

写真のコラージュ、むずかしそうですけど楽しそう。アニメのスクリーンショットとか使ってハチロクのコラージュしてみたいなと思っています。このお話はそこから。頑固な文太パパは照れ屋なんです。ハチロクの黒い部分はほとんど夜の峠の写真を使っています。白の部分は…空とかかな。写真の提供政志さん→レース関係→ラリー仲間→土屋と小柏パパまで繋がってますよきっと(笑)